知恵蔵 「リニア新幹線」の解説
リニア新幹線
1970年代に「全国新幹線鉄道整備法」に基づいて、国土交通省(当時の運輸省)によって全国各地に新幹線網を広げることが示された。リニア新幹線もこれに沿って、整備新幹線5路線を含む各地方の新幹線とともに新設が構想された。ことに、リニア新幹線は、従来の東海道新幹線のバイパス路線として東京・大阪間を1時間程度で結ぶことを課題とされた。このため、JR式マグレブ(JR-Maglev)と呼ばれる、磁気によって車体が完全に浮上することにより極めて高速な走行が可能な、超電導磁気浮上式リニアモーターカーが採用されることになった。90年にはのちに営業路線の一部ともなる実験線が山梨県に着工され実験が進められた。
リニア新幹線のルートとしては、起点を首都圏(品川が有力視されている)として名古屋を経由し、大阪へ至るほぼ直線的なルートが想定されている。ただし、山梨県から長野県を経由して岐阜県に至る部分で、3案のルートが検討されている。Aルートとして、甲府から諏訪、木曽を抜けて中津川から名古屋周辺に至る木曽谷ルート、Bルートとして、甲府から伊那を抜けて飯田から名古屋に至る伊那谷ルート、Cルートとして、赤石山脈をトンネルで抜けて飯田に至るほとんど直線的な南アルプスルートがある。距離はBルートが最も長く、Cルートが最短になるため、JR東海は費用や所要時間からCルートを考えている。しかし、沿線となる地域に大きな経済的利益をもたらすと考えられることから、長野県はBルートを要望するなど、交渉が難航している。ルート以外にも、沿線各地域で駅の具体的な位置などについて様々な要望があり、土地収用や駅建設の費用負担などをめぐって沿線地域自治体などの支援が不可欠であることから、これらの調整が課題となっている。
(金谷俊秀 ライター / 2010年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報