改訂新版 世界大百科事典 「リュコフロン」の意味・わかりやすい解説
リュコフロン
Lykophrōn
生没年:前320ころ-?
ギリシアの悲劇詩人,文法学者。エウボイア島のカルキスに生まれた。オウィディウスによれば,矢に当たって死んだという。当時のもっとも優れた7人の悲劇詩人(プレイアデス)の一人。エレトリアの哲学者メネデモスMenedēmosに学び,アレクサンドリアの王立図書館で喜劇作品の整理に携わった。64(または46)編の作品と《喜劇論》と題する論文があったと伝えられる。メネデモスを揶揄(やゆ)したサテュロス劇の断片と,イアンボス調の1474行の詩《アレクサンドラ》が伝わる。この詩は,アレクサンドラ,すなわちカッサンドラの予言をプリアモス王に伝える奴隷の独白の形式をとる。内容は,ギリシアとアジアの闘争とアエネアスの子孫であるローマ人の世界征服の予言である。この作品はあらゆる事柄が言い換えとたとえで表現され,難解な稀語・語法のゆえに有名で,古代においても注釈なしには理解できなかった。詩の一部は後世の偽作と考えられている。
執筆者:高橋 通男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報