日本大百科全書(ニッポニカ) 「りょうけん座」の意味・わかりやすい解説
りょうけん座
りょうけんざ / 猟犬座
春の宵の北の空高くに見える星座。北斗七星の南に割り込むような形で、うしかい座の連れている2匹の猟犬アステリオンとカラが入り込んでいる。昔はこの部分はおおぐま座に含まれていたが、17世紀のドイツの天文学者ヘベリウスが新しい星座として加えた。もっとも、原形は1536年に描かれた木版の星図に3匹の犬の星座として現れているので、実際にはヘベリウス以前からあったものらしい。α(アルファ)星コル・カロリは「チャールズの心臓」の意味で、1660年5月の王政復古によってイギリス王チャールズ2世が亡命先のパリからふたたびロンドンへ戻り、王位についたのを記念して、後年ハリー彗星(すいせい)でおなじみのE・ハリーが命名したものともっともらしく伝えられてきた。しかし、実際には王政復古のとき、チャールズ1世をたたえて当時の星図に「チャールズ1世の心臓」と記されたとするのが正しく、100年後の星図製作者の誤記であったものが、そのまま2世の心臓としていまに伝えられたものという。小望遠鏡での見ものとしては、M94、M63などの渦巻銀河(渦状銀河)がある。
[藤井 旭]
『小林悦子文、藤井旭写真『春・夏の星座』(1992・講談社)』▽『藪内清訳・解説『ヘベリウス星座図絵』(1993・地人書館)』