デジタル大辞泉
「から」の意味・読み・例文・類語
から[格助・接助・準体助]
[格助]名詞・活用語の連体形に付く。また上代では、助詞「が」「の」「のみ」にも付く。
1 動作・作用の起点を表す。
㋐空間的起点、出所を示す。「目から大粒の涙が落ちた」「本人から直接話を聞く」
「波の花沖―さきて散り来めり水の春とは風やなるらむ」〈古今・物名〉
㋑時間的起点を示す。「会議は午後1時から始める」「朝から強い風が吹いている」
「明けぬ―舟を引きつつのぼれども」〈土佐〉
2 経由する場所を表す。…を通って。…に沿って。「東京を出て、名古屋から京都へと向かう」
「人の親の娘子児据ゑて守山辺―朝な朝な通ひし君が来ねば悲しも」〈万・二三六〇〉
3 理由・原因・動機・根拠を表す。…のために。…によって。「操作ミスから事故が生じた」
「恋草を力車に七車積みて恋ふらくわが心―」〈万・六九四〉
4 材料、構成要素を表す。「米から酒ができる」「水は水素と酸素からなる」
5 動作・作用の開始順序や発端を示す。「先着の人から入場してください」
6 (多く下に副助詞「まで」を伴って)動作・作用の及ぶ範囲を表す。「朝早くから夜遅くまで働く」「すみからすみまで探す」
7 移動の手段・方法を表す。…によって。…で。
「訪ふべき人、徒歩―あるまじきもあり」〈かげろふ・下〉
[補説]レジで、店員が「1万円からお預かりします」と言う場合がある。「1万円から代金を頂きます」の意であろうか。従来は「1万円(を)お預かりします」と言っていた。関西から始まったともいうが不詳。1990年ころから目立ってきた言い方である。
[接助]活用語の終止形に付く。
1 理由・原因を表す。「もう遅いから帰ろう」
「年号が変はった―、暦はもらはずはなるまい」〈咄・聞上手〉
2 (終助詞的に用いて)強い主張、決意を表す。ぞ。「思い知らせてやるから」
[準体助]種々の語に付いて、それの付いた語句を全体として体言と同じはたらきをもつものにする。
1 以後、以上の意を表す。「5キロからの重さ」
2 …から始めて、…をはじめとして、の意を表す。→からに →からは →てからが
「鍋そのもの―が品よく出来上って居る」〈漱石・虞美人草〉
[補説]「から」は本来「故」の意の体言であったとみられ、上代において助詞「が」「の」に付くのも、その要素が強いからという。1は平安時代以降の用法で、上代では「より」が受け持った。は1の用法から転じたもので、近世後期以降みられるようになった。は近世前期からみられる。
から[副・接頭]
[副](あとに否定的な表現を伴って用いる)まったく。まるっきり。「から意気地がない」「から役に立たない」
[接頭]名詞や形容動詞に付く。
1 まるっきり、まったく、の意を表す。「からっ」となることもある。「からばか」「からうそ」「からっ下手」
2 すっかり、すべて、の意を表す。「から一面」「から一散」
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から
- [ 1 ] 〘 格助詞 〙 体言または体言に準ずるものを受ける。
- ① 動作の経由地を示す。…のまにまに。…に従って。…に沿って。上代はこの用法のみである。
- [初出の実例]「膂宍(そしし)の空(むな)国を頓丘(ひたを)自(カラ)、覔国(くにま)ぎ行去(とほ)りて」(出典:日本書紀(720)神代下(兼方本訓))
- 「〈本〉谷加良(カラ)行(い)かば尾加良(カラ)行(い)かむ 〈末〉尾加良(カラ)行かば谷加良(カラ)行かむ」(出典:神楽歌(9C後)早歌)
- ② 動作の起点を示す。中古に現われ、現代に至る用法。上代は、この用法としてはもっぱら「より」の方を用いる。時間的起点を示す場合と、空間的起点を示す場合とがある。
- [初出の実例]「本(もと)滋(しげ)き 本(もと)滋(しげ)き 吉備の中山 昔より 昔加良(カラ) 昔可良(カラ) 昔より 名の旧(ふ)りこぬは 今の代のため 今日の日のため」(出典:催馬楽(7C後‐8C)本滋き)
- 「その遣戸(やりど)から顔をさし出給へ」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一〇)
- ③ 手段を示す。…によって。…で。
- [初出の実例]「直に新羅を指して泛海(ふねカラ)、往く」(出典:日本書紀(720)推古八年是歳(岩崎本訓))
- ④ ( ②の用法から転じて ) 体言または接続助詞「て」を受け、「…から後」「…以上」の意を表わす。近世以後の用法。
- [初出の実例]「泥 キモノニ ツイタニヨリ ホシテカラ モンテ タタケ」(出典:交隣須知(18C中か)一)
- ⑤ ( ②の用法から転じて ) 体言を受け、「…からはじめて」「…をはじめとして」の意を表わす。「からして」の形でも用いられる。→からして。
- [初出の実例]「かう云ふ山の中の鍛冶屋は第一、音から違ふ」(出典:二百十日(1906)〈夏目漱石〉)
- [ 2 ] 〘 接続助詞 〙 活用語の終止形を受け、原因・結果を順接の関係において接続する。近世以後の用法。
- [初出の実例]「案ずる事はちっともない、外には人も知らぬから。一先(ひとまづ)内へ去(い)なしゃんせ」(出典:浄瑠璃・袂の白しぼり(1710頃)上)
- 「私は茶が嫌(きらひ)だから、これをたべます」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
からの補助注記
語源に関して、(イ) 「理由」または「間」という意の体言(山田孝雄、松尾捨治郎)、(ロ) ある事物に少しも積極的な力を加えない、という概念をもつ形式体言(石垣謙二)、(ハ) ウカラ、ハラカラ等「血族」を意味する体言が、山カラ、川カラ等「事物の性質」を表わすに至り、更に抽象化して「自然のつながり」「自然のなりゆき」の意となり、そこから経由地・出発点・理由を示す助詞が出た(大野晉「日本語の黎明」)など言われる。→語素「から(柄)」
から
- [ 1 ] 〘 副詞 〙 否定的、消極的でよくない状態を表わすことばに伴って、その状態を強める。まるっきり。てんで。さっぱり。
- [初出の実例]「からがせうぎにふっぱるから」(出典:滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)上)
- 「身体許(なりばかり)大きう御座いまして、から、役に立ちません」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一〇)
- [ 2 ] 〘 接頭語 〙 ( 名詞・形容動詞の語幹に付く )
- ① その状態がはなはだしいこと、また、すっかりその状態になりきること、の意を添えて強める。「から一散」「からしょてっぺん(=まっさき。いの一番)」
- ② 否定的、消極的でよくない状態を表わす語に付いて、まるっきり、てんで、の意を添えて強める。「からっ」の形をもとる。「から嘘(うそ)」「から馬鹿」「から坊主」「から無茶苦茶」「からっ下手」
から
- 〘 接続詞 〙 ( 助詞「から」から接続詞に転用された語 ) 先行の事柄の当然の結果として、後行の事柄が起こることを示す。だから。そこで。
- [初出の実例]「只今(たでへま)主(にし)が、下司下臈の手にかかって、名告(なのる)でもねへと思ふも無理ぢゃアござらぬ。カラ私(わし)が、しちくどく身分を明すさ」(出典:滑稽本・大千世界楽屋探(1817)上)
から
- 〘 副詞 〙 ( 多く「と」を伴って用いる ) 堅い物のふれあう音を表わす語。
- [初出の実例]「弓をばからとなげすて」(出典:平家物語(13C前)四)
か‐らクヮ‥【果】
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通
「から」の読み・字形・画数・意味
【】か(くわ)ら
【蝸】から
【果】から
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
カラ
Carlo Carrà
生没年:1881-1966
イタリアの画家。エジプトのアレクサンドリアに生まれ,1906年にミラノのブレラ美術学校に入り,当時流行のディビジョニスム(分割主義)に影響された。10年には同世代のボッチョーニやルッソロらと共に未来派宣言の起草者の一人として熱狂的にこの運動に参加した。翌年2度目のパリ旅行でキュビスムに接し,未来派のダイナミズムとキュビスムの建築的な構成を総合し,代表作《無政府主義者ガリの葬儀》(1910-11)を発表した。17年にはフェラーラでキリコと出会い,形而上絵画に共鳴し,理論・実践両面で活躍した。しかし,20年ころからはジョットなど初期ルネサンスの古典的形態をさらに単純化した古拙的なリアリズムに徹した。
執筆者:井関 正昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
カラ
イタリアの画家。エジプトのアレクサンドリア生れ。1910年ミラノでボッチョーニ,ルッソロらと未来派の運動を興して,きびしい構成と単純な色彩のうちに形態の運動感や時間の概念を盛り込んだ作品を発表。その後キリコと出会い形而上絵画に進んだが,のち伝統的具象絵画に転じた。《無政府主義者ガリの葬儀》(1910年―1911年)は未来派時代の代表作。
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世界大百科事典(旧版)内のからの言及
【ストルマ[川]】より
…ブルガリアからギリシアへ南下して流れる川。ギリシア語でストリモンStrymón川,トルコ語でカラKara川とよばれる。ソフィアの近く,ビトシャ山地に源を発し,ブルガリア西部を南流してギリシア領に入り,エーゲ海のストリモン湾に注ぐ。…
【氏族制度】より
…〈うじ〉は明らかに国家の制度であるが,もともとは氏族にあたる自治的な血縁集団を基礎に形成されたものと考えられている。日本語の〈うじ〉をツングース語あるいはモンゴル語系統のものとする説もあるが,別に日本語の〈うから〉〈やから〉〈はらから〉〈ともがら〉などに見る〈から〉は,満州語をはじめ,こんにち多くのツングース諸族の父系氏族をあらわすハラxalaあるいはカラkalaと同系と思われ,〈かばね〉の語も,新羅の骨品制などと同じく,骨の語をもって氏族をあらわすアルタイ語系諸族と思想的に相つらなるものがある。大和朝廷を中心とする支配階級の〈うじ〉の制度は,おそらくアジア大陸のアルタイ語系諸族の父系氏族と歴史的な連関をもつものかもしれない。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」