日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘベリウス」の意味・わかりやすい解説
ヘベリウス
へべりうす
Johann Hevelius
(1611―1687)
ドイツの天文学者。初期の月面詳細図の製作者。ダンツィヒに生まれ、ライデン大学で数学と法律を修めた。卒業後、ヨーロッパ各国を遊学し、1641年帰国に及んで私設天文台を建立し、妻の協力のもとで天体観測を楽しんだ。1642~1645年おもに太陽を観測し、太陽の自転周期を正確に定め、また黒点近傍の輝部をファキラ(白斑(はくはん))とよんだ。1644年に水星の位相を測定した。1647年には10年来の月面の継続観測の成果を『セレノグラフィア』(『月面誌』)として刊行した。これには詳細な地形図が含まれ、白く輝く凸出部分を「山」、薄暗い平たい部分を「海」とよんだ。また山脈には地球上の山脈名をあてた。これらの観測には長焦点の望遠鏡を用いたが、1657年には肉眼で北半球の恒星を観察し始めた。その成果として『ウラノグラフィア』(『星天図』)のなかに1500個の星を収録した。そのほかに1654年と1668年に彗星(すいせい)の記録を公刊し、その軌道が放物線であることを示唆した。
[島村福太郎]