日本大百科全書(ニッポニカ) 「リングコッド」の意味・わかりやすい解説
リングコッド
りんぐこっど
lingcod
[学] Ophiodon elongatus
硬骨魚綱スズキ目アイナメ科に属する海水魚。キバアイナメの和名があるが、むしろ市場では英名のリングコッドで通用する。アメリカのアラスカ半島、コディアック島からバハ・カリフォルニア北部にかけて分布する。水深430メートル付近から沿岸近くの岩礁域に生息するが、アラスカでは水深90メートル以浅に多くみられる。体は細長く、後方に向かって細くなる。頭はやや縦扁(じゅうへん)する。口は大きく、上顎(じょうがく)の後端は目の後ろを越える。下顎は上顎より少し突出する。両顎の歯は大きく、犬歯状。背びれ基底は長くて、棘(きょく)状部と軟条部の境で深くくぼむ。体と頭部は細かい円鱗(りん)で覆われる。尾びれの後端はまっすぐで、くぼまない。体の背側面に、眼径より小さく褐色、灰色、緑色がかった暗色の斑紋(はんもん)が多数ある。生息場所によって体色は著しく変化に富む。小さい個体では緑色が強い。12月から3月に沿岸や潮間帯の岩の割れ目や下に桃色の卵を産む。卵の直径は3.5ミリメートルで、固い膜に包まれ、粘着性が強い。体長1メートルあまりの大きな雌が50万個ぐらいの卵を産む。直径76センチメートル、13.6キログラム以上の卵塊の記録がある。雄は外敵から卵を守り、大きな胸びれで卵に水流を与えて世話をする。孵化仔魚(ふかしぎょ)は全長7~10ミリメートルで、目が青く黄色に輝く油球があり、底に沈んでいる。13~49ミリメートルの仔魚は河口域にすみ、コペポーダや小型甲殻類を食べる。1年で27センチメートル、2年で47センチメートルほどになり、10~14年で約91センチメートルになる。雄は46~51センチメートル、雌は70~76センチメートルで成熟する。ニシン、イカナゴ、カレイ、スケトウダラ、メバルなど魚類、タコ類、甲殻類を貪欲に食べる。根付き型(岩礁や瀬などに定住する魚)と回遊型の2型がある。おもに、釣り、トロール、底刺網、延縄(はえなわ)などで漁獲されるが、スポーツフィッシングの対象としても人気がある。カナダ、アメリカでは鮮魚として重宝され、日本にも輸入されている。フライ、バター焼きなどにすると美味である。
[尼岡邦夫]