リンド(読み)りんど(英語表記)Robert Staughton Lynd

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リンド」の意味・わかりやすい解説

リンド(Robert Staughton Lynd)
りんど
Robert Staughton Lynd
(1892―1970)

アメリカの社会学者。1914年プリンストン大学を卒業。雑誌編集者を経て、社会宗教研究所、社会科学研究協議会において中小都市の調査研究を行う。1931年コロンビア大学から博士号を取得し、以後1960年までコロンビア大学において社会学を教えた。夫人ヘレンHelen Merrell Lynd(1896―1982)と共同で、アメリカ中西部の典型的な小都市を調査し、相対的に自律的なその小都市の社会・文化体系が、さまざまな人間関係を通じて、いかにして諸個人の欲求充足をしているかを明らかにした(『ミドルタウン』1929)のに続いて、その小都市が大恐慌に対応する姿を、そこにおける社会的矛盾、階級構造、権力構造の分析を中心にして明らかにした(『転換期のミドルタウン』1937)。これらの業績コミュニティ研究の古典として、かつまた現代アメリカ社会学を切り開いた著作として高く評価されている。また、『何のための知識か』(1939)において、社会科学の没価値性を批判し、問題解決型の現実科学の重要性を説いたが、これはC・W・ミルズを経由して後の批判的社会学の一つの基礎になった。

[矢澤修次郎]

『小野修三訳『何のための知識か』(1979・三一書房)』『R・S・リンド、H・M・リンド著、中村八朗訳『ミドゥルタウン』(1990・青木書店)』


リンド(Robert Wilson Lynd)
りんど
Robert Wilson Lynd
(1897―1949)

イギリス随筆家。アイルランド系。ベルファスト出身。ロンドンに出てジャーナリズムの世界に入り、文学批評軽妙洒脱(しゃだつ)なエッセイで新聞のコラムニストとして有名になる。『ニューズ・クロニクル』誌や『ニュー・ステーツマン・アンド・ネーション』誌にY・Yの筆名寄稿した。『考えてもぞっとする』(1936)など、イギリスの風物を伝えて妙。妻のシルビア・リンド(1888―1952)も詩人、小説家として知られた。

[櫻庭信之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リンド」の意味・わかりやすい解説

リンド
Lynd, Robert Staughton

[生]1892.9.26. インディアナ,ニューオールバニ
[没]1970.11.1. ウォーレン
アメリカの社会学者。機能主義を代表する社会学への貢献と,文化人類学的手法の都市社会への適用によって知られるが,同時に社会構造分析の基礎に階級,階層を据えたことでも注目されている。夫人 Helen (旧姓 Merrell) との共同の労作である『ミドルタウン』 Middletown (1929) ,『変貌のミドルタウン』 Middletown in Transition (37) は,自己の参与観察に基づいて都市住民の全生活過程をその生活様式においてとらえ,都市社会を全体的に分析し,古典的著作となった。また社会学の現実科学としての位置づけのために,価値自由 (没価値性) の論理を否定したことや,地域社会を歴史的にだけでなく全体構造的に明らかにすることの必要を説いた。

リンド
Lynd, Robert

[生]1879.4.20. ベルファスト
[没]1949.10.6. ロンドン
イギリスの随筆家,ジャーナリスト。ロンドンに出て『ニューズ・クロニクル』紙の文芸部長となり,また Y.Y.の筆名で雑誌『ニュー・ステーツマン』に随筆を寄稿,C.ラムの伝統を受継ぐ随筆家として名をなした。主著『アイルランドそぞろ歩き』 Rambler in Ireland (1912) ,『新旧の巨匠たち』 Old and New Masters (19) ,『無知の喜び』 The Pleasures of Ignorance (21) ,『書物と作家』 Books and Writers (52) 。

リンド
Lind, James

[生]1716. エディンバラ
[没]1794.7.13. ハンプシャー,ゴスポート
イギリスの医師。イギリスの海軍衛生学の父といわれる。 1739年,イギリス海軍の軍医となり,48年エディンバラ大学で学位取得。 58年以降はゴスポートにあるハスラー海軍病院に勤めた。当時イギリス海兵の間に壊血病が蔓延,多くの死者を出しているのをみて 54年に壊血病に関する論文を発表し,海兵の食事にかんきつ類の生ジュースを含めることを提唱した。そのほか,病院船の採用,船内病室の換気,シラミ退治,飲用のための海水蒸留など,海上生活に多くの改革を行なった。

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