リンパ管炎
リンパかんえん
Lymphangitis
(循環器の病気)
リンパ管とその周囲の組織の炎症で、細菌がリンパ管内に入り込み、炎症を引き起こします。リンパ管の炎症が中枢に広がると、“リンパ節炎”を起こします。リンパ節は首、腋の下、足の付け根に集中しているので、リンパ節炎を起こすとこれらの場所がはれてきます。
主に溶血性連鎖球菌、時にブドウ球菌が四肢の外傷部、水虫感染部、潰瘍部などから侵入して起こります。全身感染の一環として起こることもあります。
病気にかかると、急激な寒気と全身のだるさを感じ、時に40℃近くの高熱が出現することもあります。リンパ管炎を起こした場所では、体表面の長軸に沿って赤い線(炎症を起こしたリンパ管)が現れますが、一般に圧痛(押すと痛む)は軽くてすみます。また、所属リンパ節のはれが認められます。
慢性期になると、炎症を起こした場所は硬い索状物となり、圧痛を残します。
四肢の長軸方向に沿った赤い線は外から見え、また同部の熱感と圧痛があり、視診で診断可能なことがほとんどです。細菌感染に伴い、白血球の増加や高熱がみられるのも特徴です。
静脈炎との区別が重要ですが、静脈炎では発熱はまれで、皮膚の赤い線やリンパ節のはれなどもみられません。
急性期には、臥床して患肢の安静を図り、傷の手当てと冷却、抗生剤の投与を行います。放置すると敗血症になることがあります。むくみが強い時は、利尿薬の投与を行います。
慢性期でむくみが強い時には、弾性ストッキングをはきます。リンパ節が明らかにはれているのに血液検査で炎症反応があまりみられない時には、リンパ節生検(組織を取って調べる検査)を行い、全身の病気が隠れていないかをみます。
リンパ管炎を疑った時は、傷の手当てと、早めに抗生剤の投与が必要となります。放置して敗血症になると治療が非常に困難になるので、早めに近くの内科を受診してください。
丸山 義明
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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リンパ管炎 (リンパかんえん)
lymphangitis
リンパ管の炎症をいい,リンパ節の炎症はリンパ節炎lymphadenitisという。
リンパ管炎には急性のものと慢性のものとがあり,急性炎症はさらに毛細リンパ管炎とリンパ幹管炎とに区別される。しかし単にリンパ管炎というときには,臨床上は急性リンパ幹管炎をさす。原因菌はおもに連鎖球菌,ブドウ球菌などであるが,他の菌や毒素,機械的刺激でも起こりうる。毛細リンパ管炎は,起炎菌侵入部周囲が瀰漫(びまん)性に発赤腫張するもので,多くは自然治癒するが,リンパ幹管炎へ移行するものもある。リンパ幹管炎には,皮膚および皮下のリンパ管が侵される表在性リンパ管炎と,深部のリンパ管が侵される深在性リンパ管炎とがあり,前者は臨床的に診断が容易であるが,後者は静脈炎と誤られやすい。表在性リンパ管炎はおもに四肢に起こり,感染創からリンパ管に沿って発赤した線条が認められ,灼熱感,腫張,疼痛または搔痒(そうよう)感を伴う。この線条は圧痛のある硬い索状物として触れることもある。多くの場合は流入するリンパ節の急性炎症も併発する。
全身症状としては,発熱,悪寒戦慄(せんりつ)がみられ,敗血症に進む場合もあるが,化学療法,安静,冷却などで数日で治癒することが多い。慢性リンパ管炎は急性炎症から移行することはまれで,多くは結核,梅毒,フィラリアなどの感染により最初から慢性の経過をとる。リンパ管壁の肥厚,繊維化がみられ,管腔が閉塞すると局所に浮腫を生じるようになり,広範囲に及ぶと象皮病となる。
リンパ節炎には,急性リンパ管炎に付随して起こるもののほか,鼠咬(そこう)症,猫ひっかき病や伝染性単球症,性病,結核性リンパ節炎などがある。ほとんどが化学療法で治癒するが,切開排膿または摘出術が必要となることもある。
執筆者:小野 美貴子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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リンパ管炎(リンパ管疾患)
概念
局所の感染がリンパ管に波及した状態をいう.
原因
外傷,虚血性あるいはうっ血性皮膚潰瘍,爪周囲膿瘍,足趾白癬症などの感染が原因となる.起炎菌は溶血性連鎖球菌が多く,ブドウ球菌や嫌気性菌も原因となる.
症状
発熱,全身倦怠感,悪寒などの全身症状に加えて,患肢の感染部からリンパ管の走行に沿った線状の発赤を認める.増悪すると領域リンパ節の腫脹と圧痛を認めるようになる.
診断
臨床症状と血液検査上の炎症所見から,診断は容易である.
治療
抗菌薬の投与と感染源の治療である.[古谷 彰]
■文献
International Society of Lymphology: The diagnosis and treatment of peripheral lymphedema. 2009 Consensus Document of the International Society of Lymphology. Lymphology, 42: 51-60, 2009.
小川佳宏:リンパ浮腫の診断と評価.リンパ浮腫診療実践ガイド(加藤逸夫,重松 宏,他編),pp3-15, 医学書院,東京,2011.
Stanley GR: Lymphedema: Evaluation and decision making. In: Rutherford’s Vascular Surgery 7th ed (Cronewett JL, Johnston KW ed), pp1004-1016, Saunders, Philadelphia, 2010.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
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リンパ管炎
リンパかんえん
lymphangitis
リンパ管の炎症。症状は,病原菌の侵入部に接して皮膚に赤い線が1本または数本現れ,所属リンパ節の方向に向う。この発赤部に沿って圧痛があり,表層性では索状のものを触れる。局所の安静,湿布,化学療法などでなおる。毒力の弱い病原菌によるリンパ管炎に繰返しかかると,慢性リンパ管炎になり,リンパの流れが悪くなってリンパ浮腫を起し,皮膚炎や皮膚潰瘍,象皮様病変などを合併するようになる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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