リンパ管炎(読み)リンパかんえん(その他表記)lymphangitis

翻訳|lymphangitis

改訂新版 世界大百科事典 「リンパ管炎」の意味・わかりやすい解説

リンパ管炎 (リンパかんえん)
lymphangitis

リンパ管炎症をいい,リンパ節の炎症はリンパ節炎lymphadenitisという。

 リンパ管炎には急性のものと慢性のものとがあり,急性炎症はさらに毛細リンパ管炎とリンパ幹管炎とに区別される。しかし単にリンパ管炎というときには,臨床上は急性リンパ幹管炎をさす。原因菌はおもに連鎖球菌ブドウ球菌などであるが,他の菌や毒素,機械的刺激でも起こりうる。毛細リンパ管炎は,起炎菌侵入部周囲が瀰漫(びまん)性に発赤腫張するもので,多くは自然治癒するが,リンパ幹管炎へ移行するものもある。リンパ幹管炎には,皮膚および皮下のリンパ管が侵される表在性リンパ管炎と,深部のリンパ管が侵される深在性リンパ管炎とがあり,前者は臨床的に診断が容易であるが,後者静脈炎と誤られやすい。表在性リンパ管炎はおもに四肢に起こり,感染創からリンパ管に沿って発赤した線条が認められ,灼熱感,腫張,疼痛または搔痒(そうよう)感を伴う。この線条は圧痛のある硬い索状物として触れることもある。多くの場合は流入するリンパ節の急性炎症も併発する。

 全身症状としては,発熱悪寒戦慄(せんりつ)がみられ,敗血症に進む場合もあるが,化学療法安静冷却などで数日で治癒することが多い。慢性リンパ管炎は急性炎症から移行することはまれで,多くは結核,梅毒,フィラリアなどの感染により最初から慢性の経過をとる。リンパ管壁の肥厚,繊維化がみられ,管腔が閉塞すると局所に浮腫を生じるようになり,広範囲に及ぶと象皮病となる。

 リンパ節炎には,急性リンパ管炎に付随して起こるもののほか,鼠咬(そこう)症猫ひっかき病や伝染性単球症,性病,結核性リンパ節炎などがある。ほとんどが化学療法で治癒するが,切開排膿または摘出術が必要となることもある。
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内科学 第10版 「リンパ管炎」の解説

リンパ管炎(リンパ管疾患)

概念
 局所の感染がリンパ管に波及した状態をいう.
原因
 外傷,虚血性あるいはうっ血性皮膚潰瘍,爪周囲膿瘍,足趾白癬症などの感染が原因となる.起炎菌は溶血性連鎖球菌が多く,ブドウ球菌や嫌気性菌も原因となる.
症状
 発熱,全身倦怠感,悪寒などの全身症状に加えて,患肢の感染部からリンパ管の走行に沿った線状の発赤を認める.増悪すると領域リンパ節の腫脹と圧痛を認めるようになる.
診断
 臨床症状と血液検査上の炎症所見から,診断は容易である.
治療
 抗菌薬の投与と感染源の治療である.[古谷 彰]
■文献
International Society of Lymphology: The diagnosis and treatment of peripheral lymphedema. 2009 Consensus Document of the International Society of Lymphology. Lymphology, 42: 51-60, 2009.
小川佳宏:リンパ浮腫の診断と評価.リンパ浮腫診療実践ガイド(加藤逸夫,重松 宏,他編),pp3-15, 医学書院,東京,2011.
Stanley GR: Lymphedema: Evaluation and decision making. In: Rutherford’s Vascular Surgery 7th ed (Cronewett JL, Johnston KW ed), pp1004-1016, Saunders, Philadelphia, 2010.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リンパ管炎」の意味・わかりやすい解説

リンパ管炎
リンパかんえん
lymphangitis

リンパ管の炎症。症状は,病原菌の侵入部に接して皮膚に赤い線が1本または数本現れ,所属リンパ節の方向に向う。この発赤部に沿って圧痛があり,表層性では索状のものを触れる。局所の安静,湿布,化学療法などでなおる。毒力の弱い病原菌によるリンパ管炎に繰返しかかると,慢性リンパ管炎になり,リンパの流れが悪くなってリンパ浮腫を起し,皮膚炎や皮膚潰瘍,象皮様病変などを合併するようになる。

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