日本大百科全書(ニッポニカ) 「リン酸オセルタミビル」の意味・わかりやすい解説
リン酸オセルタミビル
りんさんおせるたみびる
oseltamivir phosphate
A型およびB型インフルエンザ感染症に対する経口抗インフルエンザウイルス薬。製品名「タミフル」。経口投与後、消化管より吸収され、肝エステラーゼにより活性化体に変換される。呼吸気道内に速やかに移動し、インフルエンザウイルスの増殖に必須の酵素であるノイラミニダーゼに結合することにより、ウイルスの増殖を阻止する。オセルタミビル活性体は、アメリカのギリアド・サイエンシズGilead Sciences社で開発されたシアル酸類似体を、スイスのラ・ロッシュF. Hoffmann-La Roche社との共同開発で、エチルエステル型プロドラッグとすることで経口吸収が可能となった。日本では2000年(平成12)、成人におけるインフルエンザ感染症に対する治療薬としてカプセル剤が承認された。続いて予防薬としても認められ、さらに1歳以上の小児に対するドライシロップ剤も2002年に承認された。
カプセル剤、ドライシロップ剤とも発症2日以内に投与を開始することにより、罹病・発熱期間の短縮がみられる。カプセル剤は含量75ミリグラム、ドライシロップ剤は3%含有。成人および体重37.5キログラム以上の小児には1回75ミリグラムを1日2回5日間、予防には1日1回7~10日間、ドライシロップ剤では幼小児の場合体重1キログラム当り1回2ミリグラム。用事懸濁(服用するときに適量の水に1回分を攪拌(かくはん))して経口投与。A型またはB型インフルエンザ感染症と診断された者のみが対象。鳥インフルエンザにも有効。
副作用には腹痛、下痢(げり)、吐き気、発疹等がみられる。10歳以上の未成年の患者で本剤服用後、異常行動が発現し、転倒等の事故が発生しており、原則として使用を差し控える。
[幸保文治]