日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルーズベルト石」の意味・わかりやすい解説
ルーズベルト石
るーずべるとせき
rooseveltite
モナズ石構造の蒼鉛(そうえん)(ビスマス)の正ヒ酸塩鉱物。第32代アメリカ大統領ルーズベルトが就任前の1910年代にボリビアのポトシ地方を探検旅行中、モチャMocha近傍サンチャフイロSantiaguiloで採集した流紋岩中の錫(すず)鉱脈の標本中から発見された鉱物。彼が採集したか彼の同行者が採集したかは明らかでないが、彼が乗っていた馬の鞍(くら)のポケットから出てきた試料の中から本鉱が発見されたことは明らかである。発表は1946年のことで、ルーズベルト本人はすでに逝去していたが、彼は生前このことを聞かされていたという。その後ドイツやアルゼンチンからも報告されている。こちらのものは細粒粉末状で輝蒼鉛鉱の仮晶をなす。石英脈中にコロイド状組織をもった錫石と共存する。なお、1994年チェコ共和国ボヘミア地方のモルダウMoldava鉱床、ヨゼフJosef鉱山から同成分の正方変態が発見され、正方ルーズベルト石tetrarooseveltite(Bi[AsO4])と命名されている。ちなみにこれは灰重石と同構造である。
[加藤 昭 2018年12月13日]