岩石中の割れ目を鉱物が充填(じゅうてん)したものを脈といい、充填鉱物が経済的に採掘可能な場合、鉱脈という。鉱脈となる割れ目には剪断(せんだん)割れ目(断層)と張力割れ目がある。剪断割れ目に形成された鉱脈は幅が狭いのに対し、張力割れ目に形成された鉱脈は広く、10メートル以上に達することもある。鉱脈中の鉱物は鉱液とよばれる100℃以上の熱水溶液からの沈殿物である。鉱液から沈殿する鉱物は、溶解度の関係で温度により異なる。高温脈(300℃以上)は錫(すず)、タングステン、中温脈(350~200℃)は銅、亜鉛、鉛、低温脈(250℃以下)は鉛、金、銀の鉱物の産出で特徴づけられる(温度は多くの仮定の下に推定されるので、括弧(かっこ)内の数値は目安)。鉱液はその温度に対応する熱水変質作用を周囲の岩石に及ぼす。時間的に連続する一連の鉱液から沈殿した鉱物のみからなる鉱脈を一回上昇脈、複数の時期の鉱液から生成した鉱脈を多回上昇脈という。
[正路徹也]
岩石のひび(裂罅(れつか))や断層などの割れ目を満たして有用な鉱物が生成している鉱床。鉱化流体が岩石の割れ目に沿って流動して鉱物を沈殿させたものが,もっとも一般的な鉱脈である。ふつう板状で,大規模なものでは水平方向に数km,垂直方向(脈が傾いている場合には傾斜延長方向)に3km,脈幅は数十mに達するものがある。形態による人為的な分類であるから,多数のこまかい割れ目が密集している場合は鉱染鉱床となり,割れ目の一部分が肥大して筒状~芋状となれば塊状鉱床と呼ばれる。金,銀,銅,亜鉛,鉛,スズ,タングステン,モリブデン,水銀,アンチモン,マンガンなど多くの金属の鉱脈が知られており,鉱床のもっとも重要なタイプの一つである。日本では,金銀鉱脈としては新潟県佐渡鉱山,鹿児島県串木野鉱山,銅鉱脈としては秋田県尾去沢鉱山,栃木県足尾鉱山,亜鉛・鉛鉱脈としては北海道豊羽鉱山,宮城県細倉鉱山(1987年閉山),長崎県対州鉱山などが代表的な例である。兵庫県生野鉱山,明延鉱山(1987年閉山)は銅,亜鉛,鉛,スズ,タングステンなど多種の金属を産する特異な鉱脈として世界的に著名である。
執筆者:島崎 英彦
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