モナズ石(読み)もなずせき(英語表記)monazite-(Ce)

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モナズ石」の意味・わかりやすい解説

モナズ石
もなずせき
monazite-(Ce)

セリウム(Ce)およびトリウム(Tr)の鉱石鉱物としてもっとも重要なものの一つ。花崗(かこう)岩質ペグマタイト、ある種の変成岩(チャルノック岩charnockite)、カーボナタイトcarbonatite(火成起源の炭酸塩岩)、高温熱水鉱床中、気成鉱床中、あるいはこれらから導かれた砂鉱(さこう)(漂砂鉱床)中に産する。またある種の堆積(たいせき)岩中にも自成鉱物として生成される。この種のものは、最初比較的低温条件で含水相ラブドフェンrhabdophane-(Ce)(化学式Ce[PO4]・1~2H2O)として生成され、のち脱水されてモナズ石となったものである。自形は短柱状ないし粒状。ラブドフェンからの脱水産物は、きわめて微細な多孔質の六角柱状の仮晶をなすため、大気汚染物質の濾過(ろか)用フィルターとして用いられる。日本では福島県石川地方をはじめ各地の花崗岩質ペグマタイト中に少量産する。

 希土類元素を主成分とする種については、もっとも多量に含まれる元素の元素記号を、括弧(かっこ)でくくった接尾語を使って区別する規定がある。モナズ石はmonazite-(Ce)のほか、monazite-(La)、monazite-(Sm)やmonazite-(Nd)が知られている。日本では本来のものをモナズ石、後者をそれぞれランタンモナズ石、ネオジムモナズ石という習慣が固定しつつある。日本では岐阜県中津川市恵比寿(えびす)鉱山閉山)のものがランタンモナズ石に属する。また、茨城県高萩(たかはぎ)市下大能(しもおおの)のペグマタイト中のモナズ石はサマリウムモナズ石である。香川県高松市金山(かなやま)のペグマタイト中のものがネオジムモナズ石に属する。英名ギリシア語の「孤独」を意味するモナゼインに由来し、初期に発見されたいくつかの産地産出がまれであったことによる。

加藤 昭 2018年10月19日]


モナズ石(データノート)
もなずせきでーたのーと

モナズ石
 英名    monazite-(Ce)
 化学式   Ce[PO4
 少量成分  Ca,Th,U,Pb,ΣY,Al,Fe,Si
 結晶系   単斜
 硬度    5~5.5
 比重    5.26
 色     褐,黄褐,赤褐,灰
 光沢    樹脂,ガラス~亜金剛
 条痕    白
 劈開    一方向に明瞭
       (「劈開」の項目を参照)
 その他   monazite-(La)および-(Nd)もある

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モナズ石」の意味・わかりやすい解説

モナズ石
モナズいし
monazite

セリウム族希土類元素のリン酸塩鉱物。 (Ce,La,Y,Th)PO4 。通常最大9%程度までの酸化トリウムを含んでおり,トリウムの原料鉱物としても重要。単斜晶系。短柱状,粒状,塊状の結晶。断口は貝殻状ないし不規則。硬度5~5.5,脆弱。比重 4.6~5.4。樹脂状光沢。黄褐,赤褐色など。透明ないし半透明。条痕は無色。酸性深成岩類,片麻岩類,結晶片岩類中にジルコンなどとともに副成分鉱物として産するほか,花崗岩質ペグマタイトや高温熱水鉱脈中などに濃集して鉱床をつくる。特にこれらに由来する漂砂鉱床は稼行対象として重要。インド,ブラジル,オーストラリア,マレーシアが主要産地。

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