日本大百科全書(ニッポニカ) 「レポ取引」の意味・わかりやすい解説
レポ取引
れぽとりひき
repurchase agreement
repurchase transaction
債券や株式などの有価証券を買い戻し条件付きで行う取引。債券貸借取引ともいう。買い戻し条件付き取引を英語でレパーチャス・アグリーメントというため、レポ取引とよばれる。日本では、有価証券の貸借取引で金銭を担保として差し出し、一定期間後に同種同量の有価証券の返還を受ける「現金担保付有価証券貸借取引」のことをさす。つまり資金調達する側は有価証券を貸し出し、資金運用する側は現金を担保として差し出す取引で、決済時に調達側は現金と担保金の金利を、運用側は有価証券と有価証券の貸借料をそれぞれ相手側へ支払う。レポ取引は実質的には、有価証券と資金を一定期間交換する取引であり、有価証券を活用した短期の資金調達手段の一つとみることもできる。調達側が支払う担保金金利と、運用側の支払う有価証券貸借料の差額(担保金金利-貸借料)が短期金利の一種であるレポ金利であり、これはレポ取引の資金調達コストを意味する。レポ取引はアメリカで生まれ、欧米で広く普及しているが、欧米では貸借取引ではなく売買取引をレポ取引と定義しているため、買い戻し条件付き売却取引をさす。
日本では、債券のレポ取引が1996年(平成8)4月にスタートし、1998年には株式のレポ取引も始まったが、債券レポ取引が主流である。また1997年からは、日本銀行が公開市場操作(オペレーション)の手段としてレポ取引を採用した。通常、レポ取引は調達側と運用側が相対で取引するが、仲介業者が間に入って有価証券の管理や時価評価などの事務を担当する「トライパーティ・レポ取引」も行われている。日本のレポ取引は100兆円を超える市場規模にまで拡大したが、2008年秋のリーマン・ショック時にはレポ取引の決済が一時的に不能に陥り、いったんは市場規模が縮小し、その後増加に転じている。
[矢野 武 2016年4月18日]