感染性胃腸炎の原因となる病原体の一つ。レオウイルス科に分類されるRNAウイルスである。1973年、オーストラリアのメルボルンにある王立小児病院のビショップRuth Bishop(1933― )らによって、嘔吐(おうと)や下痢をくり返す患者の検体から発見された。乳児が感染することが多く、2~4日の潜伏期間をおいて発症し、嘔吐と下痢を主症状とし、脱水症状のほか白色の便がみられることもある。春先の3~5月頃に流行し、症状が長引くケースもあり、とくに2歳児までに感染すると脱水症状を伴って重症化することも多い。感染経路は主に経口感染で、便検査による検出により診断される。ヒト以外の動物にも感染する。病原体に触れてしまった場合は手首まで含めて十分に手洗いし、消毒には塩素系漂白剤などを希釈して用いる。
予防にはワクチンが効果的で、世界保健機関(WHO)が接種を推奨するワクチンの一つであり、定期予防接種の対象としている国も多い。日本では2011年(平成23)からワクチン接種が可能となり、2020年(令和2)10月から定期接種となった。
[編集部 2021年6月21日]
…上部小腸内に腸球菌が異常に増殖するための発酵性下痢であるとする腸球菌説,過敏性体質,年齢,食事,腸内菌叢の変動などの要因によって準備状態にあるところに寒冷刺激がストレス源となり下痢が起こるという体質説,特定の,あるいは非特定のウイルスの腸管内感染によるものとするウイルス説などである。しかし1973年,オーストラリアのビショップR.F.Bishopらが乳児下痢症の腸管上皮細胞内にロタウイルスとよばれるウイルスを発見し,日本でも臨床的に仮性小児コレラと診断された患者から高率にロタウイルスが確認され,仮性小児コレラはロタウイルス感染による乳児の胃腸炎であるとされるようになった。便が白くなる機序については完全に解明されてはいないが,ロタウイルスの感染が十二指腸や空腸上部に最も強く起こることから,その影響で胆道ジスキネジーが起こって胆汁の排出が妨げられ,一過性に便が白くなるものと考えられている。…
…ウイルスの感染によって起こる下痢症。病原体がウイルスであることは以前から知られていたが,組織培養法の開発によって,おもにエンテロウイルスであることが判明,さらに乳幼児に多い下痢症がおもにロタウイルスによることが確認された。下痢症を起こす既知ウイルスにはこのほか,アデノウイルス,レオウイルス,ノオオークウイルス,コロナウイルス,小型ウイルス粒子などがある。…
※「ロタウイルス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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