ワスプ(英語表記)WASP

翻訳|WASP

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワスプ」の意味・わかりやすい解説

ワスプ
WASP

北米,おもにアメリカ合衆国で,白人 (White) ,アングロ・サクソン系民族 (Anglo-Saxon) ,プロテスタント (Protestant) の3条件を満たしているエリート層のこと。 WASPは上記3つの社会的属性の頭文字をさしている。 1620年アメリカへ『メイ・フラワー』号により移住してきた清教徒たち,ならびに彼らと同じ民族的・社会的属性をもつ民族集団がアメリカ合衆国におけるエリート層とみなされてきた。その意味では,同じヨーロッパ系の白人の移民のなかでも地中海のラテン系白人は,アメリカ白人社会のなかではしいたげられてきた層であった。また従来はワスプ意識上の主流派であるばかりでなく,数のうえでもアメリカ社会の多数派であったが,19世紀後半における大量の非ワスプ系移民の流入により,ワスプは多数派ではなくなった。さらに世代を重ねることにより,ワスプ系白人と非ワスプ系白人や少数民族との結婚が次第に増加し,厳密な意味でのワスプ系アメリカ人の数はかなり減っているはずである。それと同時に一部のアメリカ人 (保守的で伝統主義的な南部のワスプ系白人など) を除いて,意識のうえでも自分が厳密な意味でのワスプであると自負すること自体が特異な状況となりつつある。 1960年の J.ケネディ大統領の当選は初のカトリック系大統領の誕生であり,また 88年の民主党大統領候補デュカキス氏はギリシア系で,アメリカ社会の主流がもはやワスプ系白人のみに独占されていないことを意味することとなった。今日では保守系白人層という概念のほうが,ワスプの概念に代ってアメリカの伝統主義的な白人層の主流意識を的確に表わしていると考えられる。

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