改訂新版 世界大百科事典 「ワルラスの法則」の意味・わかりやすい解説
ワルラスの法則 (ワルラスのほうそく)
Walras' law
経済全体にn個の財が存在するとして,第i財の価格がpi(i=1,2,……,n),各財の価格がp=(p1,……,pn)であるときの第i財の総需要量をDi(p),総供給量をSi(p)(i=1,2,……,n)と記そう。そのとき任意の価格についてが成立することをワルラスの法則という。L.ワルラスがその一般均衡理論の数式化においてしばしば活用したもので,命名はO.ランゲである。この内容を言葉で述べれば,〈経済全体の総需要価値額は総供給価値額に恒等的に等しい〉ということになる。この法則が成立する理由は以下のとおりである。いま経済を構成する主体として消費者と生産者を考えてみよう。まず各消費者について,消費者の総需要価値額=消費者の総供給価値額+配当所得,という関係が成立する。ここで総需要価値額とは消費財の購入額の総計を,総供給価値額とは供給する生産要素(代表的なものは労働)からの報酬の総計をいう。また各生産者については,生産者の総供給価値額-生産者の総需要価値額=利潤,という関係が成立する。この左辺は生産物の価値額から投入物の価値額を差し引いたものである。ここで利潤はすべて配当にまわされるとすれば,上の二つの関係をすべての経済主体について合計することによってワルラスの法則が導出されることになる。この法則によれば第n財を除くn-1個の市場がすべて均衡していれば,第n財の市場も,その価格がゼロでないかぎり,均衡していなければならないことが知られる。
→一般均衡理論
執筆者:川又 邦雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報