翻訳|Iowa
アメリカ合衆国、中北部の農業州。面積14万5790平方キロメートル、人口292万6324(2000)。州都はデ・モイン。東をミシシッピ川、西をミズーリ川にくぎられ、北はミネソタ州、南はミズーリ州に接する。中央低地の一部である大平原地帯に位置し、北西から南東方向に緩やかな傾斜をみせる。中北部を中心に、アメリカのコーンベルトの心臓部を形成する肥沃(ひよく)な土地は、更新世(洪積世)の大陸氷河や氷床の産物である。気候も農業に最適な湿潤大陸性気候である。
第二次世界大戦後は工業も発展し、州の経済は農業、工業の両方に依存しているが、農業収入はなお高く、カリフォルニア州に次ぐ。中北部を中心に生産されるトウモロコシの産高は全米第1位、干し草と大豆は第2位、オート麦は第3位である。ウシ、ブタ、ヒツジは南西部を中心に飼育され、畜産収入は全米第1位である。以上をみても、農業州として健在であることがわかる。発展を続ける工業は、食品加工、農業機械、肥料、電子機器などが中心である。鉱業では、規模は小さいが、砂礫(されき)や石灰岩などを多く産し、セメント工業が重要な地位を占めている。交通の面では、鉄道網がよく発達するうえ、ハイウェーも完備している。また、ミズーリ川およびミシシッピ川の沿岸には、ダベンポート、クリントン、ダビュークなどの河港都市が発達し、水運の中心となっている。
有史前より農耕を主とするインディアンが居住していたが、1673年、フランスの探検隊が、白人としては初めてこの地に入り、交易所が次々とつくられた。1803年のルイジアナ購入によって合衆国に譲渡され、1838年に準州となり、1846年に29番目の州に昇格した。1850年代の鉄道の開通が発展をもたらし、19世紀末からは合衆国内でも主要な農業州となった。住民の94%が白人、2.1%が黒人で、白人はスカンジナビア系、イギリス系、オランダ系が多い。「バランス」を州のモットーとして、各民族が住みよい地域社会を構成しており、人口はほぼ州の全域にわたって均等に分布する。教育が盛んな州で、州立大学、アイオワ大学をはじめ、62の大学がある。
[作野和世]
アメリカ合衆国中西部の農業州。略称Ia.。連邦加入1846年,29番目。面積14万4701km2,人口304万6355(2010)。州都および最大都市デ・モイン。州名はスー・インディアン語で〈美しい土地〉もしくは〈眠い人〉を意味する。1803年のルイジアナ購入によって合衆国領となった。地形は低い丘陵が少しあるが,全体として平坦。湿潤大陸性気候で,冬は寒く根雪があり,夏はかなり暑い。肥沃なプレーリー土壌が発達しており,トウモロコシ地帯の中心地域で,トウモロコシ(全米1位,1980)や大豆(1位)の生産をはじめ,燕麦(3位),牧草(2位)など農業一般に適する。州の土地の90%以上は農耕に利用されており,アメリカ全体における最優良地(A級農地)の25%はアイオワに存在する。それゆえ,アイオワといえば農業もしくは農村を連想するのが一般的で,ソ連のフルシチョフが訪問した農場もアイオワであった。フーバー大統領とならんで州の生んだ最も著名な政治家が,ニューディール期に農務長官をつとめたH.A.ウォーレスであったことも,農業州を象徴している。
執筆者:正井 泰夫+岡田 泰男
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