アメリカ合衆国中西部のオハイオ州からアイオワ州にかけて広がる、トウモロコシ栽培と家畜(ブタ、肉牛)飼育とを組み合わせた世界最大の混合農業地域。トウモロコシ地帯ともいう。アメリカ原産のトウモロコシの栽培は、植民地時代の初期に中部植民地(大西洋岸)で、ヨーロッパの作物や農法が失敗した後、収量の安定した作物として導入された。コーンベルトの形成過程は、開拓の進展に伴い、まず東側の森林地域(内陸低地)において、商業経済の浸透するなかで、トウモロコシは量がかさばり輸送費が高いことから、付加価値の高い商品(豚肉、牛肉、ウイスキー)へと変換する形で進行した。その後1850年ごろまでに鋼鉄製の犂(すき)、井戸掘り装置、風車、有刺鉄線の普及や鉄道の敷設などが進み、プレーリーの開拓が可能となったことで、コーンベルト方式の混合農業は西側の草原地帯へと拡大し、1900年ごろには現在の範囲に達した。コーンベルトは、肥沃(ひよく)なプレーリー土と褐色森林土が分布し、夏には気温も25℃前後になり、適度な降水量(年800~900ミリメートル)と相まって、トウモロコシの栽培に適しており、大豆(緑肥)、小麦などとの輪作が行われている。収穫されたトウモロコシはブタ・肉牛などの飼料にするほか、バイオエタノールの原料に利用したり、穀物メジャー(穀物の国際的な流通を支配する巨大な多国籍穀物商社)を通して食用・飼料用に輸出している。しかし輸入国のなかには、コーンベルトなどで栽培されている遺伝子組換えトウモロコシ(2008年は80%を占める)に対する不安の声も強い。なお、アメリカでは農業経営の専門化が進み、飼料作物農場と畜産農場とへの分化が顕在化しており、ブタの飼育は現在も盛んであるが、肉牛の肥育はコーンベルトからグレート・プレーンズ(大平原)へと移動している。また、コーンベルトの農業は高度に機械化、企業化され、生産性もきわめて高いが、アグリビジネス企業への従属傾向が強まっている。
[井村博宣]
『矢ケ崎典隆著『食と農のアメリカ地誌』(2010・東京学芸大学出版会)』
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アメリカ合衆国中西部で東西にベルト状にひろがるトウモロコシの農業地帯。トウモロコシ地帯ともいう。全米トウモロコシ生産高の80%近くを占め,世界総生産高の1/3に達する。そのため世界市場のトウモロコシ価格はここで決まるといわれる。東はオハイオ西半からインディアナ,イリノイ(全米2位),アイオワ(1位),さらにウィスコンシン,ミシガン,ミネソタ(3位)南部,サウス・ダコタ,ネブラスカ(4位)東部,ミズーリ北部の諸州一帯にまたがる。この地帯は年降水量500~1000mmの湿潤大陸性気候で,肥沃なプレーリー土壌にも恵まれ,また機械化・企業化の進んだ農業経営が見られる。トウモロコシの大部分は飼料となるため,家畜とくに豚と肉牛の飼育も盛んである。トウモロコシ以外では大豆,牧草,小麦,野菜なども栽培されている。
執筆者:正井 泰夫
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…東側と北側は森林地帯であるが,おもにプレーリー(大草原地帯)で,白人渡来以前に栄えたインディアンのミシシッピ文化圏の一部を含んでいる。いわゆるコーンベルト(トウモロコシ地帯)に重なっていることからもわかるように,トウモロコシ,小麦,ダイズ,牧草,牛,豚,酪農製品など,アメリカの農産物主産地であると同時に,五大湖周辺の鉱床やシカゴ,デトロイトを中心とする工業地帯でもある。 このような一大経済圏としての中西部は,歴史的・文化的にもまとまりを有している。…
…反応は中性~弱酸性で養分に富んだ肥沃な土壌である。北アメリカ中西部のトウモロコシの大生産地帯(コーン・ベルト)はこのプレーリー土の上に成立している。またアルゼンチンやウルグアイのパンパスは亜熱帯の大草原であるが,ここの土壌もプレーリー土にきわめて類似した土壌である。…
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