プレーリー(読み)ぷれーりー(英語表記)prairie

翻訳|prairie

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プレーリー」の意味・わかりやすい解説

プレーリー
ぷれーりー
prairie

アメリカ合衆国の中部からカナダの一部にかけて、ミシシッピ川を中心に広がる広大な草原とその分布地域の名称。緩やかに起伏する波状地と、それを刻む樹枝状の谷からなり、東側は森林帯に、西側はグレート・プレーンズに接する。年降水量は北部で400ミリメートル前後、南部で800~1000ミリメートルと少ないが、春・夏に集中するため植物の生育には有利である。

 典型的なプレーリーは高さ2メートルにも達するイネ科の草本からなり、川沿い以外では樹木を欠いている。プレーリーには19世紀なかばまでバイソン大群がすみ、インディアンがそれを狩って生活していた。しかし19世紀後半以降、アメリカ合衆国が経済的に発展し、鉄道網が建設されると、土壌がきわめて肥沃(ひよく)であったことも相まって、急速に農耕地化され、今日ではアメリカ合衆国一の農業地帯となった。おもな作物は北部が春小麦、中央部が冬小麦とトウモロコシ、南部が綿花である。ここの穀物はわが国へも食糧家畜飼料として大量に輸出されている。ただ1930年代以降、粗放な経営がたたって土壌侵食が激しくなり、農民は対策に苦慮している。

[小泉武栄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プレーリー」の意味・わかりやすい解説

プレーリー
prairie

北アメリカ大陸の中部から西部に広がる広大な温帯草原。年降水量は 250~800mm。おもな植物はイネ科のハネガヤ,カモジグサ,ミノボロ,イチゴツナギ,ネズミノオ,エゾムギなど。降水量が多くなるにつれて草丈が高くなる。北アメリカ中部の真正プレーリー,その西のロッキー山脈東側の混合プレーリー,メキシコ湾に面する海岸プレーリー,ニューメキシコからアリゾナの砂漠プレーリー,太平洋岸のカリフォルニアプレーリー,北西部のパラウズプレーリーに区別される。バイソンとマタヅノカモシカがかつては大群をなしていたが,乱獲により激減し,カンガルーネズミなどのネズミ類,ノウサギコヨーテ,アナグマ,スカンクなどが生息する。現在は開拓され,ワタコムギ,トウモロコシなどの大規模な機械化農業が行われ,ウシ,ヒツジが放牧されている。

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