改訂新版 世界大百科事典 の解説
アインシュタインの関係式 (アインシュタインのかんけいしき)
A.アインシュタインによって導かれた関係式で,次の二つがよく知られている。
(1)相対性理論から導かれるエネルギーと質量の等価性を表す式。E=mc2と表され,質量m(kg)の物体は静止していても上の式で与えられるエネルギーE(J)をもつことを示す。cは光速度である。1gの質量を全部エネルギーに変えると約9×1013Jとなり,これは100万kWの発電所が1日に発生する全エネルギーに相当する。原子力エネルギーは原子核の質量の1000分の1程度をエネルギーに変えて利用する。
→相対性理論
執筆者:藤井 保憲(2)ブラウン運動の理論において導いた関係式。例えば流体中のコロイド粒子などは不規則なブラウン運動を行い,しだいに位置を変えていく。その速さは拡散係数Dで表され,時間tの間の移動距離の2乗平均は6Dtとなる。粒子に力が働くとその方向への流れ運動が起きるが,流れの速度は力の強さに比例し,比例係数fを移動度と呼ぶ。このときD=fkTと表され,この式をアインシュタインの関係式という。ただしkはボルツマン定数,Tは絶対温度である。この関係は電解質溶液中のイオンや半導体中の電子,正孔などに対しても成り立ち,その場合には|q|D=μkTのように書かれる。qは粒子の電荷,μは単位電場当りの流れ速度である。金属中電子の場合このまま適用はできないが,一般化した関係は導かれる。この関係式は実用的にも有用であるが,さらに外力のないときの不規則な運動(ゆらぎ)と外力の下での流れ運動とを関係づけるより一般的理論の先駆として重要である。
→ブラウン運動
執筆者:黒沢 達美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報