アクリルゴム(読み)あくりるごむ(その他表記)acrylic rubber

デジタル大辞泉 「アクリルゴム」の意味・読み・例文・類語

アクリル‐ゴム

《〈和〉acryl+〈オランダ〉gom》アクリル酸およびアクリロニトリル重合物から作った合成ゴム総称

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクリルゴム」の意味・わかりやすい解説

アクリルゴム
あくりるごむ
acrylic rubber

アクリル酸エステルエチルエステルやブチルエステルなど)を主成分とする合成ゴムの総称。ASTM(アメリカ材料試験協会)の規格による略称ACM。特殊ゴムの一つでポリアクリレートゴムともいう。アクリル酸エステルと2-クロロエチルビニルエーテルの共重合体が代表的である。乳化重合で合成され、架橋はアミン類で行う。アクリル酸エステルとアリルグリシジルエーテル共重合体はエポキシ側鎖とアミン類の反応で橋架けする。フッ素を含むアクリル酸エステルから製造される合成ゴムは、フッ素ゴムに分類される。アクリル酸エステルとブタジエンから合成されるゴムは、硫黄(いおう)と金属せっけんで加硫ができる。ACMはとくに耐熱性と耐油性が優れ、170℃の油中でも十分耐える。主鎖中に二重結合を含まないので耐候性や耐オゾン性もよい。しかし、耐寒性、反発弾性、耐摩耗性、耐水性および絶縁などの電気特性が他の耐油性ゴムより劣る。用途は、自動車や産業機械関係のパッキング、シール、ガスケットおよびホースなどである。

[福田和吉]

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化学辞典 第2版 「アクリルゴム」の解説

アクリルゴム
アクリルゴム
acrylic elastomer

アクリル酸エステルの重合体を主成分とする合成ゴムの総称.アクリル酸エチル-アクリル酸2-クロロエチル共重合体,アクリル酸ブチル-アクリロニトリル共重合体,アクリル酸エチル-アクリロニトリル共重合体など多くの種類がある.アミン類で加硫され,すぐれた耐熱性,耐老化性をもち,高温での耐油性にすぐれているが,耐寒性が悪い.とくにフッ素を含んだものは,耐油,耐水,耐溶媒性がよく,200 ℃ 付近までの耐熱性がある.耐油,耐ガソリン,耐熱性のゴム製品(パッキング,シーリング),その他耐衝撃用プラスチックとして用いられる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアクリルゴムの言及

【合成ゴム】より


[特殊合成ゴム]
 気体透過性が低く,自動車用チューブなどとしてすぐれた性質をもつブチルゴムはイソブチレンとイソプレンを共重合させて得られるが,1937年アメリカにおいてその合成に成功し,太平洋戦争中はアメリカの政府管理による合成ゴムGR‐Iとして生産された。アクリルゴムはアクリル酸エステル系の共重合ゴムで,1931年にドイツではじめて工業化されたものであり,耐油性,耐熱性,耐老化性にすぐれた特殊合成ゴムとして工業用部品に使用される。シリコーンゴムは44年アメリカにおいてはじめて特許出願され,それをもとに太平洋戦争中に工業生産に移されたが,耐熱性,耐寒性,電気的性質にすぐれているため,耐熱性電気部品をはじめ広く工業用部品として使用されている。…

※「アクリルゴム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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