アプサラス(読み)あぷさらす(その他表記)Apsaras

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アプサラス」の意味・わかりやすい解説

アプサラス
あぷさらす
Apsaras

古代インドの神話、文学に現れる天女妖精(ようせい)、水の精の類。古くから美女の典型とされ、インドラ神の天上の楽園において、愛人ガンダルバ乾闥婆)とともに歌舞音曲を楽しむ。その数はとくに限定されないが、13人が有名であり、そのなかでもとくにウルバシーは『リグ・ベーダ』に現れて、人間の王プルーラバスと結ばれる。ただし彼女ら天女はときに淫乱(いんらん)、不実な天女とされて古典インド文学に悲恋の素材を提供している。叙事詩にあっては彼女たちは勇士を慈しみ、戦死者を戦場よりインドラの楽園に導くものとして、北欧神話のワルキューレに似る。また、しばしばインドラの命を受けて聖者を誘惑し、破戒せしめ、彼らの胤(たね)を宿してはシャクンタラーらのたぐいまれな美女や名僧、知識の誕生となった。

[原 實]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アプサラス」の意味・わかりやすい解説

アプサラス
Apsaras

インド神話の水の妖精。彼女らは川,雲,電光,星の中に住み,みずからの姿を水鳥に化する。また,ニヤグローダ (バニヤンの樹,榕樹) ,菩提樹に住むこともある。舞踏歌詠,遊戯,賭博を好む。他面,人々に精神異常狂気を起させる。ガンダルバの愛人であるが,人間と結婚する物語も伝えられている。メーナカー,シャクンタラー,ウルバシーなどは有名なアプサラスである。

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世界大百科事典(旧版)内のアプサラスの言及

【アンコール・ワット】より

… また,アンコール・ワットの回廊等の壁面には,高さ1m前後の女神が高浮彫で彫られている。彼女らは〈アプサラス(舞女)〉もしくは〈デーバ(女神)〉とみなされ,すなわち本尊に対する霊をなぐさめる供養女たちで,1700体以上数えられている。さらに,聖殿内にはかつて1632年(寛永9)にここを訪れた日本人の森本右近太夫の墨筆の跡があったが,1970年代の戦乱中に,惜しくも損傷した。…

※「アプサラス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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