電光(読み)デンコウ

デジタル大辞泉 「電光」の意味・読み・例文・類語

でん‐こう〔‐クワウ〕【電光】

雷雲中や雷雲間、または雲と地面との間に起こる、火花放電の際の発光現象雷鳴を伴うことが多い。稲妻いなずま稲光いなびかり
電灯の光。
[類語](1稲妻稲光いかずち鳴る神らい雷鳴雷電天雷急雷疾雷しつらい迅雷じんらい霹靂へきれき雷公遠雷春雷界雷熱雷落雷紫電しでん

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精選版 日本国語大辞典 「電光」の意味・読み・例文・類語

でん‐こう‥クヮウ【電光】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 帯電した雲と雲との間、または雲と地面との間に火花放電が起こるときに発する光。屈折線状に見えるのを閃電、空の一部分が一面に明るくなるのを幕電という。いなびかり。いなずま。
    1. [初出の実例]「命短電光急、作松下塵埃」(出典:性霊集‐一〇(1079)九想詩・璅骨猶連相)
    2. 「電光はかねてより九穂を孕みて三秋を待つ」(出典:海道記(1223頃)鈴鹿より市腋)
    3. [その他の文献]〔南斉書‐五行志〕
  3. ( が瞬間的に発するものであるところから ) きわめて短い時間、非常にすばやい動作などをたとえていう語。電光石火。
    1. [初出の実例]「電光(デンクヮウ)の命草葉の露の朝を待つが如し」(出典:仮名草子・夫婦宗論物語(1644‐46頃))
  4. 電灯の光。電灯のあかり
    1. [初出の実例]「アドバルーン、ネオン・サイン又は電光による表示」(出典:公職選挙法(1950)一四三条)
  5. 発射された銃弾のきらめき。
    1. [初出の実例]「語未だ了(をは)らざるに一電光(デンクヮウ)を放つ」(出典:花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉三三)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「電光」の意味・わかりやすい解説

電光
でんこう
lightning

雷放電に伴って大気中の放電路が発する光のこと。稲光(いなびかり)、稲妻(いなずま)ともいう。肉眼では電光は放電路の全長にわたって一瞬のうちに光るように見えるが、特殊カメラの撮影によると、実は雲から電光が伸びてきて地面に近づいた瞬間に、強い電光が地面から雲に向かって同じ道を上昇する。そして通常の落雷ではこのような雲と地面の間の電光の往復が数回繰り返される多重雷撃などがわかり、10キロメートルにも及ぶ長大な放電路の形成過程が解明された。

 また電光の形について分類された名称がいくつかある。普通に見られるのが樹枝状電光で、地面にまで到達しない枝分れが主幹についている。リボン電光とよばれるのは相似形の電光が何本か横並びに見えるもので、多重雷撃の放電路が強風により流されたためと考えられている。放電路が遠方であるか、雲に隠れて見えないときには、空の一部が電光に映えて明滅する。これは幕電とよばれる。

[三崎方郎]

『竹内利雄著『雷放電現象』(1987・名古屋大学出版会)』『速水敏幸著『謎だらけ・雷の科学――高電圧と放電の初歩の初歩』(1996・講談社)』『北川信一郎・河崎善一郎・三浦和彦・道本光一郎編著『大気電気学』(1996・東海大学出版会)』『北川信一郎著『雷と雷雲の科学――雷から身を守るには』(2001・森北出版)』『日本大気電気学会編『大気電気学概論』(2003・コロナ社)』

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百科事典マイペディア 「電光」の意味・わかりやすい解説

電光【でんこう】

稲妻(いなずま),稲光(いなびかり)とも。雷(らい)放電((かみなり))における発光現象。雷放電は大気の絶縁破壊とともに起こる大規模な火花放電で,多く雷鳴を伴う。最初の放電が約50m進行したのち,次の放電が前の放電で電離された経路をたどってさらに50m進む。こうして次々に放電が起こって地上に達する。これを階段型先駆雷撃という。階段型先駆雷撃が地面に到達すると,ただちに地面から雲底へ帰還雷撃が起こる。こののち,矢型雷撃が地面に直進し,帰還雷撃と組み合わさって多重雷撃を形成する。1回の雷放電で地面に流れる電気量は約20〜30クーロンで,雷撃の進行速度は,先駆雷撃で毎秒200km,帰還雷撃で数万km,矢型雷撃で数千kmくらい。
→関連項目稲妻球電雷雨落雷

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電光」の意味・わかりやすい解説

電光
でんこう
lightning

の電気によって,雷雲の内部,あるいは雲と地面との間で生じる火花放電。いずれの放電も規模がきわめて大きく,放電直前の電位差は 108~109V,中和される電荷は 20~30C(クーロン),放電路の長さは数kmから十数kmに及ぶ。電光という語は,狭義にはこの放電現象に伴う発光を意味し,稲妻または稲光ともいう。放電は 10分の1秒ほどの短時間に発生するため,それに伴う電光も一つとみられるがそうではない。高速回転カメラを用いた電光観測の結果,空気という絶縁体を通して行なわれる高圧放電の機構がかなりはっきりしてきた。それによると落雷に伴う電光はいくつかの雷撃からなる。すなわち,雷撃は雲から大地に向かって下降する前駆と呼ばれる光の比較的弱い放電と,これが地面に届いた瞬間,同じ経路を通って大地から雲に向かって上昇する非常に明るく速度の大きい放電(帰還雷撃)とからなる。多重雷撃の場合,第1雷撃の前駆は,第2雷撃以後のそれとは非常に異なっており,持続時間が 10倍くらい長く,光は 20m進むたびに約 50マイクロ秒の停止時間をおき,また前の経路を通ってさらに 20m進むという具合に下降することから,階段型前駆と呼ばれる。第2雷撃以後の前駆は,第1雷撃のとき確立された放電路に沿って長さ約 40mの発光部が下降するというかたちで行なわれるため,矢型前駆と呼ばれる。

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普及版 字通 「電光」の読み・字形・画数・意味

【電光】でんこう(くわう)

稲妻の光。〔初学記、一に引く帝王世紀〕農氏の末、少典氏、附寶に娶(めと)る。大電光の北斗樞星を繞(めぐ)るを見る。郊を照らし、附寶に感じ、孕(はら)むこと二十を壽邱に生む。

字通「電」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の電光の言及

【雷】より

…この種の放電を火花放電,スパークとよぶ。自然が起こす火花放電が雷で,このとき放射される光が電光,稲妻,あるいは稲光lightningで,音が雷鳴thunderである。この火花放電は,雨,雪,ひょう等を降らせる対流雲の発電作用によって生じ,その規模はきわめて大きく,放電路の長さは2~20km(代表値5km)で,中和する電荷は3~300C(代表値25C)である。…

【当身技】より

…当(あて),当身,当技(あてわざ)ともいう。人体の急所とされる天倒(てんとう)(頭頂部),烏兎(うと)(みけん),霞(かすみ)(こめかみ),人中(じんちゆう)(鼻下),水月(すいげつ)(みぞおち),明星(みようじよう)(下腹部),電光(でんこう)(右ひばら),月影(げつえい)(左ひばら),釣鐘(つりがね)(睾丸),ひざ関節などを,こぶし,指先,ひじなどで突いたり,こぶし,手刀などで打ったり,ひざ,蹠頭(せきとう),かかとなどでけったりして相手に苦痛をあたえ参らせる技である。現在は乱取(らんどり)(自由練習)や試合における勝敗が中心となり,投げ技と固め技だけが使われ,当身技は危険であるので禁じられているため,活用がおろそかになっている。…

※「電光」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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