アンナプルナ山(読み)あんなぷるなさん(その他表記)Annapurna

翻訳|Annapurna

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンナプルナ山」の意味・わかりやすい解説

アンナプルナ山
あんなぷるなさん
Annapurna

ネパールヒマラヤの中央部、ガンダキ地区にある高峰群。東にマルシャンディ川を挟んでマナスル(8163メートル)、西にカリ・ガンダキ川を挟んでダウラギリ(8167メートル)を臨む。この両峡谷の間、ほぼ北西から南東および南北に走るアンナプルナ・ヒマールの尾根伝いに、西よりアンナプルナⅠ(8091メートル)、Ⅲ(7555メートル)、Ⅳ(7525メートル)、Ⅱ(7937メートル)と続き、さらにその南にアンナプルナ南峰(7219メートル)がそびえる。しかし一般にアンナプルナというときは、アンナプルナⅠをさす。「アンナプルナ」とはヒンドゥー教女神のことで、「アンナ」(アプナ)は水で潤し、「プルナ」は生産をあげることを意味し、豊穣(ほうじょう)の女神である。高度からいえば世界10位にすぎないが、にわかに注目されたのは、1950年にフランスのエルゾーグ隊がたった1回の攻撃によって初登頂に成功したからであり、しかも第二次世界大戦前にはただの一つも陥落しなかった世界初の8000メートル級処女峰だったからである。これを契機にヒマラヤ登山の黄金時代が到来した。アンナプルナⅡは1961年イギリス・インド・ネパール合同隊、Ⅲは1961年インド隊、Ⅳは1955年ドイツ隊が、おのおの初登頂している。

[金子史朗]

『モーリス・エルゾーグ著、近藤等訳『処女峰アンナプルナ――最初の8000m峰登頂』(2000・山と渓谷社)』『日本ヒマラヤ協会監修『ヒマラヤへの挑戦2 8000m峰登頂記録』(2000・アテネ書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「アンナプルナ山」の意味・わかりやすい解説

アンナプルナ[山]
Annapurna

中部ネパール,アンナプルナ山群の主峰。標高8091m。山名サンスクリット語で〈豊穣(ほうじよう)の女神〉の意。1950年の春ダウラギリ山登頂を目ざしたフランス隊は,登頂ルートを発見できずアンナプルナ第1峰に目標を変更。リーダーのM.エルゾーグ以下,L.テレイら当時の世界のトップ・クライマーを擁するこの隊は,ナイロン素材による軽量化された優秀な装備を用い,ベース・キャンプから10日あまりの速攻で,6月3日人類初の8000m峰登頂に成功した。北面の大雪原と氷雪壁のルートを初登したエルゾーグとラシュナルの2人は,悪天に阻まれて悲惨な下降を続け,死の一歩手前で収容された。下山の道々で手足の指を切除したエルゾーグが病床で口述した《処女峰アンナプルナ》(1951)は世界各国で愛読された。南ろくポカラから見る東西60kmに及ぶこの山群の展望も有名。第2峰(7937m),第3峰(7555m)を含む全ピークが登頂されている。
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世界大百科事典(旧版)内のアンナプルナ山の言及

【登山】より

…第2次大戦まではこのほかK2,カンチェンジュンガ,ナンガ・パルバットなどの高峰への登頂が試みられたが,8000mの高峰は一つも登頂されなかった。50年フランスのM.エルゾーグ隊は鎖国を解いたネパールにはいり,アンナプルナ主峰(8091m)に初めて登頂した。これが人類初の8000m峰登頂であり,またこの隊はナイロン製のテントやロープなどを最初にヒマラヤで使用した科学的装備の隊であった。…

【ヒマラヤ[山脈]】より

…(3)ネパール・ヒマラヤ 行政的にはネパール王国の範囲で約800km。西からアピ・サイパル,カンジロバ,ダウラギリ,アンナプルナ,マナスル,ガネーシュ,ランタン・ジュガール,ロルワーリン,クーンブ(エベレスト),カンチェンジュンガの山群を含み,8000m峰を10座も数える。(4)シッキム・ブータン・ヒマラヤ ティスタ川からマナス川まで約400km。…

※「アンナプルナ山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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