アンナペレンナ(その他表記)Anna Perenna

改訂新版 世界大百科事典 「アンナペレンナ」の意味・わかりやすい解説

アンナ・ペレンナ
Anna Perenna

古代ローマの年のめぐりの女神。アンナ普通名詞〈年annus〉を女性形にしたもの,またペレンナは〈永久〉の意。彼女の祭りは3月15日(旧暦の新年最初の満月の日)に,フラミニア街道の最初の一里塚がある地点の森の中で催された。この日は無礼講が許され,人々は酒杯を重ねてその数だけの年の幸せを祈った。女神に関しては詩人オウィディウスが《祭暦》の中で二つの話を伝えている。一つはこの女神をカルタゴの女王ディドの妹のアンナと同一視するもので,ディドの死後,イタリアへ逃れたアンナがアエネアス厚遇をうけたものの,その妻に嫌われ,河神ヌミキウスNumiciusのニンフになったと説く。もう一つは,ローマの平民が聖山に退いた前494年,商売用の菓子を彼らに提供したボウィラエ老婆アンナがのちに女神として祭られたというものであるが,いずれも詩人の創作であるかもしれない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンナペレンナ」の意味・わかりやすい解説

アンナ・ペレンナ
あんなぺれんな
Anna Perenna

老婆の姿で描かれるローマの古い女神。ペレンナは「永久」を意味する。紀元前494年、ローマの民衆が都を去ってモンス・サケルに退いたとき、食糧が不足したので、彼女は自分のつくった菓子を売って彼らを飢えから救った。そのため、民衆はローマに戻ったとき、彼女を神として祀(まつ)った。

 他の伝承では、彼女はディドの姉妹アンナと同一視されている。ディドの死後アンナはカルタゴを逃れ、イタリアにきてアエネアス(アイネイアス)に迎えられた。しかし英雄の妻ラウィニアが彼女を滅ぼそうとしたので、アンナはヌミキウス川に身を投げ、ニンフに変身した。のちにアンナは、軍神マルスが結婚するとき、花嫁ミネルバの介添え役をしてほしいとマルスから頼まれた。しかし、ミネルバ自身が結婚を拒絶したため、彼女は自分が花嫁に化け、正体があばかれると大いにマルスをあざけった。これが毎年3月15日にローマで行われたアンナ・ペレンナ祭で、少女たちが歌う卑猥(ひわい)な歌謡の起源となった。

[小川正広]

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