イタチムシ(読み)いたちむし

改訂新版 世界大百科事典 「イタチムシ」の意味・わかりやすい解説

イタチムシ (鼬虫)

腹毛綱Gastrotrichaに属する袋形動物総称,またはその1種。腹毛綱は腹毛動物門として扱われることも多い。イタチムシChaetonotus nodicaudus(=Polymerurus nodicaudus)は体長約0.3mm,体幅0.036mmほどで,夏に池や沼に出現し,水中のものの上をはったり,滑るように泳ぐ。一様に淡い橙色の体色と,その泳ぐさまからイタチムシの名がある。ときには2本の長い尾突起で跳躍する。体表は十数列に並んだ鱗板で覆われるが,鱗板に1本の棘毛(きよくもう)がでているために,体の背面全体からとげがでているように見える。頭部には1対の剛毛束と前縁に頭冠がある。尾端には約20節からなる2本の鞭状の長い尾突起がある。腹面には縦に繊毛帯があって,これで移動する。腹毛類は海岸の砂泥中や池沼にすむ微小な虫で,大きなものでも体長は1.5mmくらいである。世界に約350種知られている。人間との関係はほとんどない。イタチムシのほかに4本の枝がある錨(いかり)状のとげをもつイカリトゲオビイタチムシ,鱗板にとげをもたないウロコイタチムシ,鱗板もないハダカイタチムシなどがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イタチムシ」の意味・わかりやすい解説

イタチムシ
いたちむし / 鼬虫

袋形(たいけい)動物門腹毛虫綱イタチムシ目に属する水生微小動物の総称、またはそのなかの1種。哺乳(ほにゅう)類のイタチに似ているのでこの名がある。イタチムシ類は、体長0.3~0.5ミリメートル。体の表面がクチクラで覆われ、背面にはその変形である鱗片(りんぺん)や刺毛を備える。それらの形状や分布および足指の形態などは分類の標徴とされ、7科18属に分類されている。各地の湖沼海浜の砂泥帯、水草の生育域、コケ群落、土壌のすきまにたまっている水に生息する。室内の金魚鉢や花瓶の水にも多数出現する。本来は雌雄異体であるが、繁殖はもっぱら処女生殖である。日本で最初に発見されたイタチムシ類の学名Chaetonotus nodicaudusであったが、その後は再発見されておらず、現在は属名もPolymerurusに変更されている。

[鈴木 實]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イタチムシ」の意味・わかりやすい解説

イタチムシ
Chaetonotus nodicaudus

袋形動物門腹毛綱イタチムシ目イタチムシ科。体は円筒形状で,体長 0.3mm,体幅 0.04mm。体背面は魚の鱗のような鱗板で一面におおわれるが,おのおのの鱗板には1本の刺毛が生えているために,体全体からとげが出ているようにみえる。腹側には縦に繊毛帯があり,これで物の上をはったり,池や沼を滑るように泳いだりする。また尾の先にある2本の長い突起を使ってとびはねることもできる。微小な藻類などを食べる。

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百科事典マイペディア 「イタチムシ」の意味・わかりやすい解説

イタチムシ

腹毛動物門の動物の総称,またはその1種。イタチムシは体長0.3mmで,体表は小さな鱗板でおおわれ,各鱗板には1本の棘毛(きょくもう)をもつ。沼や池にすみ,体の後端にある2本の長い突起でとびはねることもある。

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