イワシモツケ(読み)いわしもつけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワシモツケ」の意味・わかりやすい解説

イワシモツケ
いわしもつけ / 岩下野
[学] Spiraea nipponica Maxim.

バラ科(APG分類:バラ科)の落葉低木。高さ0.5~1メートル、まれに2メートル近いものもある。枝はよく分枝し、稜角(りょうかく)がある。葉は卵状円形ないし楕円(だえん)形、長さ1~4.5センチメートル、先端がわずかに切れ込むほかは全縁、裏面はやや白色を帯びる。5~7月、新枝の先に径約8ミリメートルの白色の5弁花を散房状につける。果実は袋果(たいか)。日本固有種で、中部地方から東北地方の亜高山帯から高山帯下部の岩場などに生え、蛇紋岩地域や石灰岩地域でよくみられる。葉形は変化に富み、倒披針(とうひしん)形のものを変種ナガバイワシモツケとして区別することがある。庭によく植栽される変種トサシモツケは、四国の川岸岩上に野生し、葉は非常に細長い。

[鳴橋直弘 2019年12月13日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イワシモツケ」の意味・わかりやすい解説

イワシモツケ(岩下野)
イワシモツケ
Spiraea nipponica

バラ科の落葉低木。近畿以東の本州に分布し,山地の岩場に生える。高さ1~2mとなり,よく分枝する。若枝は淡褐色で,古くなると黒紫褐色になる。葉は互生し,楕円形または倒卵形で長さ1~4.5cm,全縁または先に鈍鋸歯があり,裏面は粉白色で質は厚い。5~6月,本年枝の先に散房花序をつけ,径 0.6~1cmの白い花を開く。花序の枝がさらに分枝して複散房花序となることもある。萼筒は杯状,萼片は5枚で卵状三角形。花弁も5枚で広楕円形ないし円形,花冠は開出する。おしべは 20本。果実は袋果となって直立し,宿存した萼片がある。

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世界大百科事典(旧版)内のイワシモツケの言及

【シモツケ(下野)】より

ユキヤナギコデマリやトサシモツケS.nipponica Maxim.var.tosaensis Makinoもシモツケの仲間で,いずれも栽培が容易であり,切花にも利用される。 コデマリに近縁のものには,近畿地方以西の本州,四国および九州の岩石地に生えるイワガサS.blumei G.DonやイブキシモツケS.nervosa Franch.et Savat.があり,トサシモツケと同じ種には,中部地方以北のイワシモツケS.nipponica Maxim.var.nipponicaや紀伊半島のキイシモツケvar.ogawae Yamanakaが知られている。関東から北では,マルバシモツケS.betulifolia Pallasがよく見られる。…

※「イワシモツケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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