花冠(読み)カカン

デジタル大辞泉 「花冠」の意味・読み・例文・類語

かかん【花冠】[書名]

呉茂一によるギリシャ叙情詩の訳詩集。昭和22年(1947)みすず書房より刊行。昭和48年(1973)、紀伊国屋書店から刊行された版により、同年、第10回日本翻訳文化賞を受賞。

か‐かん〔クワクワン〕【花冠】

一つの花の花びら全体
[補説]書名別項。→花冠

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精選版 日本国語大辞典 「花冠」の意味・読み・例文・類語

か‐かんクヮクヮン【花冠】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 種子植物の萼(がく)の内側にあって、おしべめしべを保護する器官。構成する各片を花弁という。一般に彩色に富み、花の器官の中で最も目だつ部分をなすことが多い。〔植学訳筌(1874)〕
  3. 花でつくった冠。また、花で飾った冠。
    1. [初出の実例]「政治上に於て栄誉の花冠を与ふることを喜ばざるなり」(出典:薩長土肥(1889)〈小林雄七郎〉四藩気質)
    2. [その他の文献]〔白居易‐長恨歌〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「花冠」の意味・わかりやすい解説

花冠
かかん

異花被花(いかひか)における花被の内輪を花冠という。普通は外輪(萼(がく))よりも大きく、アントシアンフラボノイドカロチノイドなどの色素を含んで赤、紫、青、黄、橙(だいだい)、白などの色をもち、また、光沢があるものが多く、花粉を媒介する昆虫を誘引する。多くの花は単色ではなく、条(すじ)や紋様があって昆虫の誘引効果を高め、内部への誘導を助けている。昆虫にはハチの仲間のように紫外線の吸収部を識別できるものがあり、花にも、人間の目には単色に見えても、紫外線吸収部の条や紋様のあるものもある。

 花冠を構成している花葉(かよう)は花弁とよばれる。1枚1枚の花弁が離生しているものを離弁花冠、いろいろな程度に合着して、少なくとも下部が杯(さかずき)状または筒状になっているものを合弁花冠といい、合弁花冠は離弁花冠よりも進化した状態であると考えられている。

 離弁花冠では、ヤマザクラのように、1枚1枚の花弁が同形同大で、放射相称になっているものが多いが、マメの類やスミレのように、すべての花弁が同形同大ではなく、左右相称になっているものもある。大部分のマメ科植物の花冠は蝶形(ちょうけい)花冠とよばれ、5枚の花弁のうち上部の1枚は最大で旗弁(きべん)、側方の1対は細くて翼弁(よくべん)、下方の1対は舟形になって平行に接し舟弁(ふなべん)または竜骨弁(りゅうこつべん)とよばれる。

 合弁花冠は、下方の狭くなった筒部と上方の広がった舷部(げんぶ)とに区別される。放射相称の合弁花冠には、キキョウツリガネニンジンのように舷部が同形同大の裂片に分かれた鐘形花冠、アサガオのように裂片に分かれない漏斗(ろうと)状花冠、アセビ、コケモモのように筒部が膨らんだ壺(つぼ)形花冠などがある。左右相称のものにはシソやサルビアのように2裂片よりなる上唇と、3裂片よりなる下唇に分かれた唇形(しんけい)花冠がある。キンチャクソウにみられるきんちゃく状花冠、タヌキモにみられる仮面状花冠などは唇形花冠の特殊化したものである。

[田村道夫]


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改訂新版 世界大百科事典 「花冠」の意味・わかりやすい解説

花冠 (かかん)
corolla

花弁が集まってつくる花のうち最も目につく部分。花葉(花を形づくる花軸以外のすべての器官)のうち裸葉性のもの(おしべと心皮を除く部分)を花被というが,花被が2層に分かれ,外花被と内花被が形態的に顕著な差を示すとき,前者を萼片,後者を花弁という。花被の集合,また萼が区別できるときには花弁の集合を花冠という。花冠を構成する花被は萼にくらべ,一般に美しく色づき,繊細で,しかも早く落ちる。主な働きは虫,まれに鳥やコウモリなどの動物を誘引することで,結果として受粉を促し,間接的に生殖を助けている。このために蜜を分泌したり芳香を出したりすることがある。花弁は萼片と互生し,ふつう数も一致する。花冠の形や色は,訪花昆虫との関係できわめて多様であり,類縁を調べたり,種を識別する形質の一つとして重視される。花弁が互いに離れたものを離弁花冠,花弁が互いに合着したものを合弁花冠と呼ぶ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「花冠」の意味・わかりやすい解説

花冠
かかん
corolla

花を構成している花弁の全体をさす。個々の花弁が分れている離弁花冠と癒合している合弁花冠とあり,前者にはスミレ,マメ,アブラナ,ナデシコ,サクラなど,後者にはツツジ,オドリコソウ,キク,キキョウ,アサガオなどがある。

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