オキシン(読み)おきしん(英語表記)oxine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オキシン」の意味・わかりやすい解説

オキシン
おきしん
oxine

8-ヒドロキシキノリンの別名。8-キノリノールともいう。

 8-キノリンスルホン酸ナトリウムを濃い水酸化ナトリウム溶液とともに加圧下で180℃に加熱すると得られる結晶エタノールアセトンクロロホルムなどの有機溶媒に溶ける。各種の金属イオンと反応して、水に不溶なキレート化合物をつくるので、アルミニウムコバルト、銅、鉄、ニッケルなどの金属の分析に用いられる。また、これらのキレート化合物はクロロホルムなどの有機溶媒に溶けるので、溶媒抽出法にも利用されている。このほかに、金属を含む酵素の作用を阻害するので酵素阻害剤としての用途もある。殺菌・消毒薬や放射性診断薬にも用いられる。この化合物の置換体である5-クロロ-7-ヨード-8-ヒドロキシキノリンは、キノホルムの通称で医薬として用いられていたが、スモン病とよばれる脊椎(せきつい)視神経症の発症原因になることが知られたため、日本では1970年(昭和45)から製造・使用が禁止されている。

[廣田 穰]

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化学辞典 第2版 「オキシン」の解説

オキシン
オキシン
oxine

8-quinolinol.C9H7NO(145.16).8-キノリンスルホン酸を水酸化ナトリウムと180 ℃ で加圧・加熱してつくる.針状晶.融点75~76 ℃,沸点267 ℃.水に不溶,エタノール,アセトン,クロロホルム,ベンゼンに可溶.種々の金属とキレートをつくり,金属イオンの分析に用いられるほか,金属酵素の阻害剤となる.各種金属キレートの生成最適pH相違,各種しゃへい剤や溶媒抽出法との組合せの利用によって,
(1)Al,Mg,Znなどのキレートの重量分析,
(2)金属オキシン塩の臭素酸塩滴定または過マンガン酸塩滴定による容量分析,
(3)キレートのクロロホルム抽出液によるAl,Mg,Fe,Cu,Coなどの比色分析,
(4)Al,Ga,In,Zn,Mgなどのオキシン塩の蛍光分析,
が行われる.[CAS 148-24-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オキシン」の意味・わかりやすい解説

オキシン
oxine

化学式 C9H7NO 。8-ヒドロキシキノリンの別称。白色柱状晶,融点 75~76℃。溶液の pH を調節すると,多くの金属イオン (Al ,Be ,Bi ,Ca ,Cd ,Co ,Cu ,Fe(III) ,Ga ,In ,Mg ,Mn ,Mo ,Ni ,Pb ,Th ,Ti ,Tl(III) ,U(VI) ,V (V) ,W(VI) ,Zn) と難溶性の沈殿を生じる。金属-オキシム錯化合物沈殿はクロロホルムなどの有機溶媒によって抽出されるものが多いので,化学分析 (重量分析,比色分析) によく用いられる。

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