改訂新版 世界大百科事典 「カワゴロモ」の意味・わかりやすい解説
カワゴロモ (川衣)
Hydrobryum japonicum Imamura
南九州の渓流の岩に付着する,コケによく似たカワゴケソウ科の多年草。鹿児島県の雄川,神川,高須川,宮崎県の大淀川などの上流にまれに生育する。属の学名Hydrobryumは,〈水中のコケ〉の意味で,コケ植物に似た形をしている。扁平で緑色の根によって固着し,光合成を行う点はカワゴケソウと同じだが,カワゴケソウの葉状の根が羽状に分枝するのに対し,カワゴロモでは円形である。本当の葉は糸状または鱗片状で長さ1cm程度。秋に開花し,花はおしべ2本,めしべ1本,針状の花被片2枚からなり,小さく目だたないが芳香があり,虫媒花である。卵形の蒴果(さくか)に,多数の微小な種子をつける。日本にはカワゴロモ属は3種あり,他の2種は南九州,屋久島に産する。
執筆者:森田 竜義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報