日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンツォーナ」の意味・わかりやすい解説
カンツォーナ
かんつぉーな
canzona イタリア語
原義は「歌」。16~17世紀のイタリアで、フランスのシャンソン(カンツォーネ・フランチェーゼ)を器楽用に編曲した作品、もしくはその様式に基づく独立した作品に与えられた名称。canzone alla franceseあるいはcanzon da sonar(合奏用のカンツォーナ)ともよばれた。このことばが初めて現れるのは1523年出版のM・A・カバッツォーニMarco Antonio Cavazzoniの曲集においてであり、リュートや鍵盤(けんばん)楽器の独奏曲では、原曲に豊かな装飾を付け加える段階から、♩♩という同音反復による生き生きとしたリズムの主題を模倣対位法によって展開する楽曲が生まれた。フレスコバルディで頂点を迎えたこの形式は、フローベルガーを経てドイツに伝えられ、フーガの成立に寄与する。一方、16世紀の終わりごろに現れたベネチア楽派の華麗な器楽合奏曲(G・ガブリエリ、バンキエリ)では拍子の変化によって明確にくぎられた各部分が、のちに個々の楽章として独立し、17世紀後半からのソナタの発展に重要な役割を果たした。
[関根敏子]