ガブリエリ

精選版 日本国語大辞典 「ガブリエリ」の意味・読み・例文・類語

ガブリエリ

  1. [ 一 ] ( Andrea Gabrieli アンドレア━ ) イタリアの作曲家。マドリガルミサ曲モテットなどを作曲、多声様式の手法業績を残した。(一五一〇頃‐八六
  2. [ 二 ] ( Giovanni Gabrieli ジョバンニ━ ) イタリアの作曲家。[ 一 ]の甥。対位法による教会音楽、オルガン曲などを作曲。ベネチア楽派を代表する。(一五五七頃‐一六一三

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百科事典マイペディア 「ガブリエリ」の意味・わかりやすい解説

ガブリエリ

ベネチア楽派を代表するイタリアの音楽家。ガブリエーリともいう。(1)アンドレアAndrea〔1510から1520-1586〕。作曲家,オルガン奏者。ベネチア生れ。サン・マルコ大聖堂の楽長を務めていたウィラールトに学んだとも伝えられるが,真偽は定かではない。北イタリア各地でオルガン奏者を務めたのちバイエルン公アルブレヒト5世に一時仕え,1565年に最初の作品集《サクラ・カンツィオ集》を献呈。1564年生地のサン・マルコ大聖堂第2オルガン奏者,1585年第1オルガン奏者に就任。作品の中心となるのはモテットミサ曲,詩篇歌などの宗教的声楽曲で,複数の合唱団と器楽群により音色の対比を鮮やかに描き出す独自の様式を確立。その芸術は甥のジョバンニやハスラーなどの弟子を通じ,イタリアおよびドイツに広範な影響を与えた。声楽曲では《マドリガーレマドリガル)集》6巻(出版1566年−1589年)も残し,《リチェルカーレ集》3巻(没後出版)などのオルガン曲も重要。ほかに器楽合奏曲もある。(2)ジョバンニGiovanni〔1553から1557-1612か1613〕。作曲家。オルガン奏者。(1)の甥。ベネチアに生まれ,叔父アンドレアに音楽を学ぶ。1576年−1579年にはペストの流行するベネチアを離れてミュンヘンのバイエルン公アルブレヒト5世に仕え,ラッススが指導する宮廷楽団で活動。1585年以降はベネチアのサン・マルコ大聖堂のオルガン奏者を務め,叔父の死後第1オルガン奏者に就任。アンドレアの未出版作品の整理・出版にも尽力した。《サクレ・シンフォニア集》2巻(1597年,1615年)にまとめられた宗教的声楽曲など,アンドレアの書法をさらに発展させた数多くの作品を残した。とりわけソナタカンツォーナカンツォーネ)などの器楽合奏曲,オルガン音楽のジャンルに残した貢献は大きく,その輝かしい音楽様式は弟子のシュッツ,アンドレア門下のハスラーらを通じてドイツ文化圏にも多大の影響を与えている。→プレトリウス

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改訂新版 世界大百科事典 「ガブリエリ」の意味・わかりやすい解説

ガブリエリ
Gabrieli

ルネサンス後期からバロック初期にかけて活躍したイタリアの音楽家。

(1)Andrea Gabrieli(1533-1585) ベネチアに生まれ,サン・マルコ大聖堂の楽長ウィラールトAdrian Willaertに学んだといわれる。若いころはベネチアはじめ北イタリア各地でオルガン奏者を務めた。一時ドイツのバイエルン公アルブレヒト5世(在位1550-79)に仕えたのち,1564年ベネチアのサン・マルコ大聖堂の第2オルガン奏者,85年に第1オルガン奏者に昇進。合唱群と器楽とを巧みに組み合わせた,音色の対比による色彩豊かな彼の音楽は,ルネサンス音楽の集大成であると同時に,バロック音楽への道を準備するものであった。甥ジョバンニをはじめとする多数の弟子たちに受け継がれた彼の芸術は,ドイツ,イタリアにひろく大きな影響を与えた。モテット,ミサ,詩篇歌ほかの教会音楽が主要であるが世俗声楽曲にもすぐれ,また純器楽曲の形成・発展に大きな役割を果たした。

(2)Giovanni Gabrieli(1553から57-1612か13) アンドレアの甥。若いころにバイエルン公に仕え,ラッススのもとで働いた。後にベネチアに帰ってサン・マルコ大聖堂のオルガン奏者になり,叔父の死後は第1奏者の地位を継いだ。叔父から受け継いだ音楽語法をさらに発展させて,ベネチア楽派の中心的人物であると同時に,初期バロック音楽の大家の一人に挙げられる。宗教声楽作品が多いが,器楽合奏曲やオルガン曲など純器楽曲の分野での貢献が,音楽史上高く評価されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガブリエリ」の意味・わかりやすい解説

ガブリエリ(Giovanni Gabrieli)
がぶりえり
Giovanni Gabrieli
(1553/56―1612)

16世紀イタリア、ベネチア楽派の頂点を築いた作曲家、オルガン演奏家。アンドレア・ガブリエリの甥(おい)。若いころの記録はほとんどないが、伯父のアンドレアに師事したと考えられている。1575~79年ミュンヘン宮廷で活躍したが、ふたたびベネチアに戻り、86年にはサン・マルコ大聖堂の第一オルガニストとなり、終生その地位にとどまった。宗教団体「スコラ・グランデ・ディ・サン・ロコ」のオルガニストも兼務している。伯父アンドレアの死(1586)後、ベネチアを代表する作曲家として活躍、97年に出版された曲集『サクレ・シンフォニエ』は、ドイツやオーストリアにおいて彼の音楽が流行するきっかけをつくった。シュッツをはじめとする多くの音楽家が、彼に学ぶためにアルプスを越えてベネチアにきたのはそのためである。しかし1606年以来、腎臓(じんぞう)結石に苦しみ、それが原因で12年8月12日、生地ベネチアで世を去った。

 ベネチア楽派の特徴である多合唱様式(コーリ・スペッツァティ)は、彼によって頂点を極め、二重、三重合唱にとどまらず、四重合唱を要する大規模な作品も現れ、伝統的なモテット様式の究極の姿を示している。『ピアノとフォルテのソナタ』に代表される器楽合奏曲も多合唱様式を基盤とし、バロックのソナタや協奏曲の様式が形成される萌芽(ほうが)としても重要な意味をもっている。

[樋口隆一]


ガブリエリ(Andrea Gabrieli)
がぶりえり
Andrea Gabrieli
(1510ころ―1586)

16世紀イタリア、ベネチア楽派の作曲家。ベネチアのカナレジョ地区に生まれたため、アンドレア・ダ・カナレジョともよばれた。サン・マルコ大聖堂聖歌隊歌手として修業後ベローナで活躍したが、ふたたびベネチアに戻り、1585年にはサン・マルコ大聖堂の第一オルガニストとなったが、翌年末ベネチアで没している。死後、甥(おい)のジョバンニによって出版された『コンチェルト集』(1587)は重要であり、そのなかの四重合唱のためのミサ曲は、天正(てんしょう)遣欧使節歓迎のために作曲されたと推定されている。甥のジョバンニ、ドイツ人のハンス・レオ・ハスラーを教育した功績も忘れられない。

[樋口隆一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ガブリエリ」の意味・わかりやすい解説

ガブリエリ
Gabrieli, Giovanni

[生]1557頃.ベネチア
[没]1612.8.12. ベネチア
イタリアのオルガン奏者,作曲家。 16世紀ベネチア楽派の代表者。 A.ガブリエリの甥で弟子でもあった。伯父の死後,跡を受継いでサン・マルコ大聖堂の第1オルガン奏者となった。作曲家としても広く名声を博し,M.プレトリウス,H.シュッツ,J.スウェーリンクら,すぐれた音楽家たちがその門をたたいた。 A.ウィラールトや伯父が開拓した分割合唱や協奏的手法をさらに推し進め,ベネチア様式を最高潮にまで高めた。器楽伴奏付きモテト,オーケストラ作品,オルガン曲など多数の作品がある。"Jubilate Deo" (1597) ,"In ecclesiis" (89) ,"Sonata pian'e forte"などが有名。

ガブリエリ
Gabrieli, Andrea

[生]1520頃.ベネチア
[没]1586. ベネチア
イタリアのオルガン奏者,作曲家。ベネチア楽派の創立者といわれる A.ウィラールトの弟子。 1566年メルロの跡を継いでベネチアのサン・マルコ大聖堂の第2オルガン奏者となり,85年同第1オルガン奏者に就任した。弟子には甥の G.ガブリエリ,ドイツの H.ハスラーらがいる。作品はマドリガル,モテト,ミサ,多数の器楽曲など,当時のイタリア音楽のあらゆるジャンルに及び,師ウィラールトの用いた2重合唱を,音色や音強の点でより色彩豊かなものにした。

ガブリエリ
Gabrielli, Domenico

[生]1659
[没]1690.7.10. ボローニャ
イタリアの作曲家,チェロ奏者。 G.レグレンツィに作曲を学び,1680年から終生ボローニャのサン・ペトローニオ大聖堂のオーケストラに所属した。チェロの名手として知られ,チェロのための最初のすぐれた独奏曲集を残すほか,オペラ,オラトリオなどを作曲。

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