フローベルガー(その他表記)Johann Jacob Froberger

改訂新版 世界大百科事典 「フローベルガー」の意味・わかりやすい解説

フローベルガー
Johann Jacob Froberger
生没年:1616-67

ドイツの作曲家,オルガン奏者,ハープシコード奏者。シュトゥットガルト音楽一家に生まれ,1637年ウィーンの宮廷オルガン奏者となる。しかし,2度のイタリア留学やパリ訪問(1652)など,生涯大半は旅に費やされた。ウィーンの皇帝に献呈された美しい自筆譜3巻は,ローマで師事したフレスコバルディやパリの友人たちから受け継いだ要素と,ドイツ特有の要素を結びつけた様式を示す点で,ドイツ鍵盤音楽史に重要な位置を占める。即興的な部分にフーガ部分が続くトッカータは後の壮大な〈トッカータとフーガ〉の出発点となる。フランスの影響を示す組曲では,舞曲数の固定化や和声にドイツ的傾向が見いだされる。とくに《フェルディナント4世の死を悼むアルマンド》のように,標題をもついくつかの作品には〈拍子にとらわれないで〉という指示も見られ,大胆な不協和音の使用とともに深い抒情を漂わせた作品となっている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フローベルガー」の意味・わかりやすい解説

フローベルガー
ふろーべるがー
Johann Jakob Froberger
(1616―1667)

ドイツの作曲家、オルガン奏者、鍵盤(けんばん)楽器奏者。洗礼日は5月19日。シュトゥットガルトの宮廷楽長バジリウス・フローベルガー(1575―1637)の息子として恵まれた音楽教育を受けたのち、1634年ごろウィーンに出、37年には宮廷オルガン奏者となるが、ローマに留学し、40/41年ごろまでフレスコバルディの薫陶を受ける。41~45年、53~57年ウィーンの宮廷オルガン奏者を務めるが、パリ、ロンドンブリュッセル、ドイツ各地を旅行したのち、ウュルテンベルク・モンペリアル公女ジビッラの「誠実で熱心な教師」として、67年5月6/7日、バーゼル近郊エリクール(現在はフランス領)で世を去っている。トッカータ、リチェルカーレファンタジアカンツォーナカプリッチオ、組曲などからなる彼の鍵盤曲は、ヨーロッパ各地に旅した経験に根ざしたイタリア様式とフランス様式の混合によって、バッハに至るドイツ鍵盤音楽の方向を決定した。

樋口隆一

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フローベルガー」の意味・わかりやすい解説

フローベルガー
Froberger, Johann Jakob

[生]1616.5.18. シュツットガルト
[没]1667.5.7. エリクール
ドイツのオルガン奏者,作曲家。 1637年にウィーンの宮廷オルガン奏者に就任したが,同年ローマに留学し G.フレスコバルディに学んだ。 41~45年と 53~57年に再びウィーンに戻り,オルガン奏者をつとめ,62年にロンドンをはじめヨーロッパ各地を旅行,晩年はエリクールのウュルテンベルクの大公妃シビラに仕えた。作品にはトッカータ,ファンタジア,カンツォーナ,カプリッチョ,リチェルカーレ,組曲などの鍵盤楽曲多数がある。

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ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者) 「フローベルガー」の解説

フローベルガー

ドイツの作曲家。オルガニストとしても活動した。クラヴィーアのための組曲やトッカータは、後のJ.S.バッハの作品へとつながっていくものである。父親から音楽の手ほどきを受け、オルガニストのシュチアクレー ...続き

出典 (社)全日本ピアノ指導者協会ピティナ・ピアノ曲事典(作曲者)について 情報

世界大百科事典(旧版)内のフローベルガーの言及

【サラバンド】より

…性格も地域や時代によりさまざまであるが,主として緩やかな3/4拍子または3/2拍子の荘重な趣をもち,弱起を用いないのが通例で,第2拍に長い音符をおき,アクセントがつけられる。フローベルガーがバロック舞踊組曲に導入して以来,一般にクーラントとジーグの間におかれて組曲中の花形舞曲となった。18世紀後半に音楽の時代様式の交替とともに廃れたが,19世紀末から20世紀初頭にかけて器楽曲に復活し,ドビュッシーの組曲《ピアノのために》(1901)の第2曲,サティの《三つのサラバンド》(1887),A.ルーセルの《ヘ調の組曲》(1926)などが有名である。…

※「フローベルガー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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