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16~17世紀にかけてイタリアとイギリスで流行したポリフォニーによる世俗歌曲の一種。語源はイタリアのマドリガーレmadrigaleで,元来詩の一形式で,そのような詩によるポリフォニックな歌曲は,すでに14世紀イタリアの作曲家によって手がけられていた。ペトラルカの詩にヤコポ・ダ・ボローニャJacopo da Bolognaが作曲した《Non al suo amante》などはそのよい例で,音楽的形式としては前半に反復をもつA A B型をとるのをその特徴としている。これに対して1530年以後盛んとなったルネサンス期のマドリガーレは自由形式によるのを常としている。同時代の他のイタリアの世俗曲に比べはるかに高尚で芸術的価値の高い内容の詩を歌詞とし,ポリフォニー技法によって詩の内容を描写しようとする傾向が強く,音による絵画的技法を意味するマドリガリズムmadrigalismという言葉をさえ生むに至った。初期の代表的作曲家にはベルドロPhilippe Verdelot(1470ころ-1552ころ),アルカデルト,フェスタCostanzo Festa(1490ころ-1545)らがあり,ウィラールトAdrian Willaert(1490ころ-1562),チプリアーノ・デ・ロレCipriano de Rore(1516ころ-65),デ・モンテPhilippe de Monte(1521-1603)らによって受け継がれていく。しかし,最も有名なのは後期の代表者マレンツィオ,ジェズアルド,モンテベルディらの作品である。
これらイタリアのマドリガーレはエリザベス朝中期,特に1580年代以後大量にイギリスに紹介され,その影響によってイギリス独自のマドリガル様式が成立した。その主要な作曲家にはW.バード,モーリーThomas Morley(1557ころ-1602),ウィールクスThomas Weelkes(1575ころ-1623),ウィルビーJohn Wilbye(1574-1638),ウォードJohn Ward(1571-1638),ピルキントンFrancis Pilkington(1570ころ-1638),トムキンズThomas Tomkins(1572-1656)らを挙げることができる。彼らの作品によって代表されるマドリガル様式は,その基礎となったマドリガーレばかりでなく,カンツォネッタやバレットなどのより軽いイタリア世俗歌曲や,フランスのシャンソンの要素をも取り入れた幅の広いものとなっている。
執筆者:金沢 正剛
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…代表的な詩人兼作曲家としてマショーが挙げられる。イタリアでは,マドリガーレ(マドリガル),バッラータballata(フランスのビルレー系),それにカノンの技法によるカッチャcacciaが数多く作られた。ヤコポ・ダ・ボローニャJacopo da Bologna(14世紀中ごろ活躍),盲目のランディーニらが知られている。…
※「マドリガル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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