日本大百科全書(ニッポニカ) 「クマネズミ」の意味・わかりやすい解説
クマネズミ
くまねずみ / 熊鼠
black rat
roof rat
[学] Rattus rattus
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目ネズミ科の動物。熱帯アジアが分布の中心であるが、今日では世界中に生息し、50以上の亜種に分けられている。染色体数から、42本のアジア型、38本のオセアニア型、40本のセイロン(スリランカ)型の3型に大別される。日本には、染色体数42本で小形のニホンクマネズミR. r. tanezumiという家住性の亜種が分布する。尾が頭胴より長く、頭胴長16~20センチメートル、尾長17~24センチメートル、後足長31~35センチメートル、体重100~170グラム。野生種では背面茶褐色、腹面白色であるが、家住性のものでは、全身黒色のものから、背面茶色で腹面黄褐色のものなど多様である。夜行性で、熱帯では樹上生活をしているが、暖帯より寒い地域では家住性となり、家屋、倉庫、畜舎などにすむ。船に侵入するネズミの90%以上が本種である。よく鳴くが、超音波のため人間の耳には聞こえない。果実や草木の種子、穀物、飼料などを主食とし、昆虫の幼虫も食べる。ニホンクマネズミではおもに4~9月に、飼育下では周年繁殖して、1回に2~8頭の子を産む。子は90日で頭胴長15センチメートル、体重100グラムに成熟する。ヨーロッパ、アメリカ、オセアニアには染色体数38本のヨウシュクマネズミR. r. rattusが分布し、エジプトネズミなどが含まれる。
[土屋公幸]