日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
クロンシュタット軍港反乱
くろんしゅたっとぐんこうはんらん
1921年、内戦終結期のソビエト・ロシアで起こった一連の反政府反乱の頂点をなす事件。クロンシュタットはペトログラード(現サンクト・ペテルブルグ)の西、フィン湾上の島にある要塞(ようさい)都市で、バルト海艦隊の主力基地。革命後の内戦の過程で共産党一党支配体制が強化される一方、経済的疲弊はその前年までに極に達しており、農民は穀物の強制割当て徴発に不満を高めていくつかの地方で暴動を起こし、労働者もペトログラードなどでストライキを打った。これに触発されて、クロンシュタットの水兵と市民は3月1日、非共産党諸党派の活動の自由などを要求する決議を1万5000人の大集会で採択。翌日臨時革命委員会を結成し、「ボリシェビキなきソビエト」のスローガンを掲げて決起した。これに対し、ソビエト政府は大規模な鎮圧部隊を派遣し、激戦のすえに3月18日これを制圧した。反乱側の約8000人はフィンランドに脱出したが、死者600人、負傷者1000人を出し、2500人が投獄された。政府軍側でも合計約1万人の死傷者と行方不明者を出した。この事件は、共産党がそれまでの戦時共産主義からネップ(新経済政策)に転換する契機となった。
[原 暉之]