ゲーリー(読み)げーりー(英語表記)Frank O. Gehry

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ゲーリー(Frank O. Gehry)
げーりー
Frank O. Gehry
(1929― )

カナダ、トロント生まれのアメリカの建築家。1947年ロサンゼルスに移住。54年、南カリフォルニア大学卒業。55年から56年までアメリカで軍務につく。56年から57年までハーバード大学GSD(大学院大学デザイン・コース)に学び、ル・コルビュジエに影響を受ける。ビクター・グルーエンVictor Gruen(1903―80)、ヒデオ・ササキHideo Sasaki(1920―2000)などの建築設計事務所で働く。61年、パリのアンドレ・ルモンデ事務所に勤める。62年、ロサンゼルスにフランク・ゲーリー・アンド・アソシエーツを開設。
 ゲーリーは過激な彫刻的デザインを行うことで知られている。60年代と70年代の作品では、ロサンゼルスの劣悪な都市環境を意識しつつ、ベニヤやトタンなど廉価な工業素材を活用した。例えばサンタ・モニカ・プレイスのショッピングセンター(1976)は金網を重要な素材として使い、くねくねと曲がる段ボールの家具なども手がける。出世作は、サンタ・モニカの古い住宅をバリケードで包むように増改築した自邸(1978)である。金網と波形鉄板に囲まれたファサード、斜めに飛びだすガラスのフレーム、アスファルトの床など異形のデザインは、しばしばディコンストラクション(脱構築)の建築として解釈された。もっとも、警察の倉庫を美術館に変えたテンポラリー・コンテンポラリー(1983、ロサンゼルス)が示すように、堅実な改築も巧みである。
 80年代は、オブジェが飛び散ったようなデザインを展開する。ロヨラ大学法学部のキャンパス(1982、90、サンフランシスコ)は、各棟の形態に素材や色彩を振り分け、敷地にばらまき、建築自体が小さな都市を形づくっていた。またゲーリーは具象的なデザインを建築に組み込むことも多く、神戸のレストラン「フィッシュダンス」(1987)では高さ22メートルに及ぶ鯉のオブジェを使っている。魚のモチーフを好み、他の作品にも頻出する。またアーティストとの交流も多く、チャット・デイ・オフィス(1992、カリフォルニア州)では、スウェーデン生まれのアメリカのアーティスト、クレス・オルデンバーグの協力により、巨大な双眼鏡をエントランス・ホールに置いている。
 90年代は、オブジェが激しくぶつかり合うデザインに移行した。その契機となったドイツのビトラ家具博物館(1989)は、各要素が融合し、全体が一つの不整形な白いオブジェである。色彩や素材の扱いも断片的ではなく、均質性を表現し、視覚的な統一感を生む。トレド大学美術学部(1992、オハイオ州)やパリのアメリカン・センター(1994)なども、乱舞するオブジェの集合体である。アメリカン・センターやプラハのビル「ジンジャー・アンド・フレッド」(2000)のデザインでは、動く人間のイメージを参照している。
 大規模なスペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館(1997)は、90年代の代表作であると同時に、ゲーリーの手法の集大成として位置づけられる。これは都市の文脈を意識しつつ、炸裂したオブジェ風の造形をチタンの皮膜に包み、全体は魚の群れのように見える。もはや巨大彫刻であり、実現にあたっては最新のコンピュータ技術が大きな役割を果たした。三次元モデルの活用のほか、模型をスキャンしてデータに変換することにより、切削(せっさく)機の制御に直接使われている。
 カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員教授、エール大学教授、ハーバード大学教授を歴任。プリツカー賞(1989)、AIA(アメリカ建築家協会)名誉賞(1999)受賞。そのほかの主な建築作品にダンツィガー・スタジオ(1964、カリフォルニア州)、ロン・デービスのスタジオ(1972、カリフォルニア州)、ハリウッドの図書館(1986)、ピーターソン邸(1988)、フレデリック・ワイズマン美術館(1993、ミネソタ州)などがある。[五十嵐太郎]
『二川幸夫編『GA アーキテクト10:フランク・O・ゲーリー』(1993・エーディーエー・エディタ・トーキョー) ▽Henry N. Cobb The Architecture of Frank Gehry (1986, Rizzoli, New York) ▽Charles Jencks et. al. Frank O. Gehry ; Individual Imagination and Cultural Conservatism (1995, Academy Editions, London) ▽El Croquis 74/75 ; Frank Gehry 1991- 1995 (1995, El Croquis, Madrid) ▽Francesco Dal Co, et. al. Frank O. Gehry ; The Complete Works (1998, Monacelli Press, New York)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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