日本大百科全書(ニッポニカ) 「コバルトバイオレット」の意味・わかりやすい解説
コバルトバイオレット
こばるとばいおれっと
cobalt violet
(1)濃口(こいくち)コバルトバイオレット リン酸コバルトCo3(PO4)2が主体の鮮明な濃紫色顔料。コバルト塩水溶液にリン酸水素ナトリウムNa2HPO4水溶液を加え、生成するピンク色の沈殿、リン酸コバルト八水和物Co3(PO4)2・8H2Oを加熱、脱水して得られる。絵の具に使用される。
(2)淡口(うすくち)コバルトバイオレット ヒ酸コバルトCo3(AsO4)2が主体の紫色顔料で、コバルト塩水溶液にヒ酸ナトリウムNa2HAsO4水溶液を加え、生成するピンク色の沈殿を約800℃に加熱して得られる。分光反射率曲線を濃口のものと対比すると、短波長側の反射の頂点が約430ミリミクロンに移動し、長波長側の反射はいくぶん弱く、全体として青みの紫となっている。ただし、製法により赤みのものも得られ、濃口と同様絵の具に用いられる。
[大塚 淳]