コバルト60大量遠隔照射装置(読み)こばるとろくじゅうたいりょうえんかくしょうしゃそうち(英語表記)cobalt teletherapy equipment

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

コバルト60大量遠隔照射装置
こばるとろくじゅうたいりょうえんかくしょうしゃそうち
cobalt teletherapy equipment

超高圧放射線治療装置の一つで、体の深部に存在する癌(がん)の治療に用いられる。コバルト60とはγ(ガンマ)線を放出する人造放射性同位元素(ラジオ・アイソトープ)で、γ線のエネルギーは約1.12メガ電子ボルト(MeV)。γ線はX線ではないが同じ光子放射線である。電子ボルトは、放射線の透過力(エネルギー)を表す単位で、eVと記す。半減期は約5.2年である。この放射性元素を大量に壁の厚い鉛の容器に入れ、一方に穴をあけ、蓋(ふた)をしておく。使用時にこの蓋をあけると大量のγ線が穴から出てくる。この放射線(γ線)を照射して治療する装置がコバルト60大量遠隔照射装置である。
 20世紀初めに放射線治療が行われるようになったが、当時の放射線(X線)治療装置は電圧が数十キロボルトであり、皮膚表面の放射線照射治療しか行えなかった。改良型でもせいぜい100キロボルトの管電圧しか出せなかった。1930年代になると、変圧器の改良や絶縁技術の発達で、管電圧が200から300キロボルトのX線治療装置が制作された。これは高圧X線治療装置または深部放射線治療装置とよばれ、皮下の深い所の照射も可能となったが、皮膚面の放射線障害が強く深部臓器の治療は困難であった。より効果的に深部に存在する癌を治療するため、1940年代にはバンデグラーフ等電子加速器を用いて電子を800から1000キロボルト(1メガボルト)に加速してX線を出す放射線治療が世界の3、4か所で行われた。これが超高圧X線治療とよばれた。第二次世界大戦後は人造放射性同位元素が大量に生産されるようになり、コバルト60がもっとも適切な超高圧照射治療の放射線源となった。それにより多くの患者の深在癌の放射線照射治療が可能となった。
 現在では、ほとんどの装置が同軸回転照射装置といって、回転軸から80センチメートルのところに線源(コバルト60)がくるようにガントリー(線源収納容器を支える回転腕)や線源収納容器が設計されており、患者は照射台の上に寝た状態で照射を受ける。この照射台は上下、左右、前後と自由に動き、腫瘍(しゅよう)がこの回転軸と放射線の中心軸と交わるところにきたとき、照射台を固定して照射する。放射線の出る穴には、絞りがついており、腫瘍の大きさに線束をあわせる。多くの場合、収納容器には約3000キュリーのコバルト60が入れられている。この装置は維持費は安価であるが、使用済みコバルト60の処理などの問題点もあり、1980年代にはもっと透過力の強い放射線を発生することのできるリニア・アクセレレーター(リニアック)が用いられるようになり、日本では使用台数が減少しつつある。[赤沼篤夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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