コバルト六〇(読み)コバルトろくじゅう

精選版 日本国語大辞典 「コバルト六〇」の意味・読み・例文・類語

コバルト‐ろくじゅう‥ロクジフ【コバルト六〇】

  1. 〘 名詞 〙 コバルト人工放射性同位体記号 60Co 質量数六〇。天然のコバルト(質量数五九)に中性子を吸収させて作る。半減期は約五・二年でβ(ベータ)崩壊、二回のγ(ガンマ)線崩壊を経て安定したニッケル六〇になる。半減期が手ごろで、しかもラジウムより強いγ線を放射するのでγ線源として工業農業医療など広く用いられる。

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化学辞典 第2版 「コバルト六〇」の解説

コバルト60
コバルトロクジュウ
cobalt 60

コバルトの放射性同位体の一つ.半減期5.263 y で,最大エネルギー1.48 MeV(0.12%)と0.314 MeV(99%)のβ線,および1.173 MeV と1.332 MeV のγ線を伴って安定な 60Ni に崩壊する核種である.化学的に比較的安定な金属コバルトを中性子照射することによって,強い放射能のものを容易に製造することができ,しかも適度な半減期としてγ線を放出する核種であることから,γ線源としてもっとも広く用いられている.工業的には,X線にかわって透過試験,高分子材料の品質改良などに用いられ,また植物品種改良,食品の殺菌ほか,医療方面にも用いられている.このほか,59Co から 60Co を生成する際の熱中性子に対する放射化断面積が比較的よく求められていること,および生成核である 60Co の崩壊形式が比較的単純で放射能強度の絶対量を求めやすいことなどから,原子炉内の熱中性子束分布を簡単に求める方法として,59Co から生成する 60Co を利用する方法が一般にとられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「コバルト六〇」の意味・わかりやすい解説

コバルト60
コバルトろくじゅう
cobalt 60

コバルトの人工放射性同位体の一つ。コバルトに中性子照射をして得られる。半減期 5.25年でβ壊変して安定なニッケルの同位体ニッケル 60となる。同時に 1.173MeV (メガ電子ボルト) および 1.332MeVの強いγ線を放出するので,γ線源として広く用いられる。工業上はX線に代わって非破壊検査化学繊維,フィルムの改質に用いられるほか,殺菌,植物の品種改良に広く利用されている。医療面でもラジウムに代わって癌治療などに利用される。

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世界大百科事典(旧版)内のコバルト六〇の言及

【コバルト】より

…【柳田 充弘】
[放射性コバルト]
 コバルトには10の放射性同位体があり,すべて人工的につくられる。そのなかで代表的なコバルト6060Coは天然の非放射性の59Coを中性子照射して得られるもので,5.26年の半減期でβ崩壊し60Niとなり,ついでエネルギーの高い2本のγ線を放出する。半減期が適当に長いこと,透過性の高いγ線を放出することから種々の照射線源として利用される。…

※「コバルト六〇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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