日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ゴールド(Herbert Gold)
ごーるど
Herbert Gold
(1924― )
アメリカのユダヤ系小説家。オハイオ州クリーブランドに生まれる。コロンビア大学で学士、修士課程を終え、フランスのソルボンヌ大学にフルブライト奨学金で留学。その後、大学講師として各地を転々とし、かたわら作家生活を志向する。代表作『父たち』(1967)は、帝政ロシア期ポグロム(大虐殺)の恐怖のなかでユダヤの信条を守り続けた曽祖父(そうそふ)、祖父の生涯に始まり、13歳で無一文で渡米し不動産業者として成功する父の一生を通して、一ユダヤ系移民の系譜をたどりながらアメリカの社会史を描く。ほかに、中年弁護士の自己発見の過程を描く処女作『英雄の誕生』(1951)、ニューヨークの若者の風俗を描いた『塩』(1963)、大学紛争をモチーフにした『アメリカ的成功』(1970)、新しい夫婦関係を描いた『彼/彼女』(1980)、自伝『わが過ぎし二千年』(1972)など多数。
[大津栄一郎]
『大津栄一郎訳『父たち』(1973・白水社)』▽『宮本陽吉訳『彼/彼女』(1984・新潮社)』