サイトメガロウイルス感染(読み)サイトメガロウイルスかんせん(その他表記)cytomegalovirus infection

改訂新版 世界大百科事典 の解説

サイトメガロウイルス感染 (サイトメガロウイルスかんせん)
cytomegalovirus infection

サイトメガロウイルスCMVと略記)はヘルペス科に属し,風疹ウイルスとともに,胎児が母親から感染すると奇形を生ずる代表的なウイルスである。このウイルスによる感染は,一度感染すると生体内に生涯にわたって潜伏し,条件によって再び活性化するのが特徴である。臓器移植に際して強力な免疫抑制療法を受けているときや悪性腫瘍のように免疫不全状態のときなどにウイルスが再活性化しやすい。輸血後3~5週の間に発熱,脾臓腫大,肝機能障害,異型リンパ球の出現などが起こる大量輸血後症候群,高熱が2~5週間続き,頭痛,咳,筋肉痛を伴い,異型リンパ球の増多と肝機能障害がみられるCMV単核症など,多彩な感染病像を示す。

 サイトメガロウイルスの感染様式はいろいろである。まず感染を受ける時期によって,先天性-垂直感染と後天性-水平感染接触感染)に区別される。垂直感染には二つの感染様式がある。一つは,妊婦の胎盤を通して起こる胎児感染で,この場合,新生児は無症状なものから,巨細胞封入体症として小頭症肺炎肝脾腫,紫斑,低体重出生などを呈し,致死的な先天性異常をきたすものまで,病像は多彩である。欧米では先天性サイトメガロウイルス感染を受ける新生児は0.5~2.0%で,このうちの0.5%くらいが新生児期に臨床症状を呈する。日本の報告では新生児の0.6%が感染を受けている。もう一つの感染様式は,妊娠のためにサイトメガロウイルスが再活性化し,妊婦の子宮頸管からサイトメガロウイルスが排出され,胎児が出生時に吸引して起こる産道感染である。この時期に受けた感染の臨床像はほとんどわかっていない。水平感染としては,種々の感染源(尿,唾液母乳精液血液など)からの接触感染がある。日本では70%から90%の者が30歳までに感染を受けているが,ほとんどの者は気づく症状もなく不顕性で経過している。思春期以後に感染を受ける者が多い所では,性病として注目されている。輸血,臓器移植,免疫抑制療法などの医原性によるものが増加傾向にあり,ワクチンの開発が進められている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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