サイトメガロウイルス(読み)さいとめがろういるす(英語表記)cytomegalovirus

翻訳|cytomegalovirus

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サイトメガロウイルス」の意味・わかりやすい解説

サイトメガロウイルス
さいとめがろういるす
cytomegalovirus

ヘルペスウイルス科に属するウイルスの一つ。感染細胞が巨大になることから接頭辞メガロがつけられている。唾液腺(だえきせん)から検出されることが多いため、唾液腺ウイルスともよばれる。CMVあるいはHCMV(human cytomegalovirus、ヒトサイトメガロウイルス)と略称される。これに感染することにより引き起こされるのがサイトメガロウイルス感染症で、巨細胞封入体症ともいう。ヒトへの感染は、乳幼児期に母親から経産道的にもしくは母乳から垂直感染するか、周囲からあるいは移植や輸血によって水平感染し、学童期までには多くの人が感染する。症状が現れない不顕性感染が多く、さまざまな臓器潜伏感染したまま経過する。問題となるのは妊婦が初感染した場合で、胎児死亡のほか新生児に黄疸(おうだん)や先天奇形、発達遅滞、視力障害、聴力障害などを引き起こす。また、臓器移植患者が免疫抑制療法中に免疫不全状態に陥ると感染ウイルスが増殖し、間質性肺炎肝炎を引き起こすことがある。エイズ(後天性免疫不全症候群)患者のように免疫力が極度に低下している場合も、重篤な症状を伴うことがある。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サイトメガロウイルス」の意味・わかりやすい解説

サイトメガロウイルス
cytomegalovirus

ヘルペスウイルスの一種。臓器移植を受けた患者が感染すると,肝炎や肺炎を起こし,重態に陥ることがしばしばある。また,妊娠中に感染すると,黄疸 (おうだん) や血小板減少症小頭症などの先天性異常子供が生まれやすい。 FDA (米食品医薬品局) が,このウイルスの予防薬として「サイトメガロウイルス免疫グロブリン注射液」を 90年4月認可した。

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