翻訳|sandwich
薄切りのパンの間に肉、チーズ、野菜などを挟んだ組立て食。この名称はイギリスのサンドイッチ伯にちなんだといわれる。伯爵家の4代目に生まれたジョン・モンターギュ・サンドイッチ伯(1718―92)は30歳で海軍大将になったが、生まれつきの性格が賭博(とばく)好きで、トランプに熱中すると食事する時間を惜しんで食べながら続ける。そこで召使いに命じてパンの間にローストビーフやその他の料理を挟んで食べるのを常とし、相手にもこれを勧めていたので有名になり、この食べ物がサンドイッチとよばれるようになった。このようなパンの食べ方は、すでに古代ローマにもみられ、古くロシアでも前菜の一種としてオープン・サンドが使われていた。ドイツでは、小形のパンに肉やソーセージを挟んだものをベレークテス・ブレーチヒェンbelegtes Brötchenといい、ベレーゲンbelegenという語には「雌に雄をかける」という意味もあって、性的に表現したことばで表されている。オムレツや卵などを挟むのはフランスからの流行で、アメリカではあぶったチーズを用いることが多いなど、中身(フィリング)は各国好みでさまざまであったが、19世紀の終わりごろからは中身の種類も多様になってきた。
このように、サンドイッチは個人の簡易食としてイギリスに起源したので、イギリス流のサンドイッチは半食分half mealであるが、アングロ・アメリカ流では集会食用としてカントリークラブなどで1食分whole mealに変わり、クラブ・サンドイッチとよんでナイフとフォークで食べる。
[阿久津正蔵]
サンドイッチを形態で分類すると次のようになる。
(1)クローズド・サンドイッチ 2枚のパンに中身を挟んだ普通のサンドイッチ。
(2)オープン・サンドイッチ パンの上に中身をのせて、彩りと味の調和を考えて組み立てられる。デンマークのスモーレブロードは北欧を代表する有名なもので、5種のパンを使って200種ものオープン・サンドをつくる。
(3)デッカー・サンドイッチ パン3枚に中身を2層に挟んだダブルデッカーと、パン4枚に中身を3層に挟んだスリーデッカーなどがある。
(4)トースト・サンドイッチ 食パンを厚めに切ってトーストし、卵の目玉焼き、焼きベーコンなどの温かい中身を挟む。普通のサンドイッチが冷食であるのに対して温食のおいしさをねらっている。
(5)ホット・サンドイッチ ハンバーガー、ホットドッグが代表的なものである。
(6)パーティー・サンドイッチ ロールものとローフものが代表的。ロール・サンドイッチは、パンで中身をのり巻きのように巻き、色や形を美しくつくる。ローフ・サンドイッチは、大形のローフのまま華やかにつくり、客前で切り分ける。また、セルフサービス・サンドイッチは、薄切りのパンと中身を別々に並べ、各自が好みによって組み立てながら食べる。
[阿久津正蔵]
サンドイッチをつくるパンは角食パン、バゲット、バターロール、ハンバーガーロール、黒パンなどが多い。サンドイッチの種類によって厚さを決める。角食パンでは5ミリメートルくらいの厚さが標準で、パーティー用にはその半分くらい、トースト・サンドイッチ用には倍の厚さに切る。サンドイッチ用のパンには、砂糖、油脂などの配合率の多いリッチ(副材料が入ったもの)なものが用いられるため、焼き上がりが柔らかく薄切りにしにくいので、普通は1日置いてすこし固くなったものがよいとされるが、パンが固くなると老化して、デンプンが消化しにくくなり、香味も落ちてくる。できるだけ古くしないでつくるほうがよい。
バターはクリーム状に滑らかに練り、中身に応じて練りがらしを少量混ぜ合わせ、パンに平均にたっぷり塗る。これは、バターの風味を加えるだけでなく、中身の水分をパンに浸み込ませないためでもあり、また挟んだ中身が動かないように張り付けるためでもある。
中身はハム、ソーセージ、ロースト肉、コンビーフ、レバーペーストなどの加工肉類、イワシの酢油漬け、サケやマスの薫製、魚の水煮缶詰類、各種のチーズ、ゆで卵、キュウリ、トマト、タマネギ、レタスなどの生野菜類、リンゴ、バナナ、イチゴなどの果物類を組み合わせる。盛付けにはパセリ、ピクルス、紅しょうがなどで、見た目にも美しく、食感のバランスも整える。食事としては、魚、肉類と野菜類を栄養成分的に組み立てるのがよい。
[阿久津正蔵]
薄く切ったパンの間に肉,野菜などをはさんだ料理。こうした食べ方は古くから行われ,フランスでは昔から農夫が黒パンに肉をはさんで仕事にもって出たり,地方によっては,旅に出る人に肉をはさんだパンをもたせる風習もあった。サンドイッチの名は,カードに熱中したイギリスのサンドイッチ伯爵John Montagu,4th Earl of Sandwich(1718-92)が食卓につく暇を惜しみ,トーストしたパンにコールドビーフをはさんで食べたことから起こったという。
サンドイッチには食パンのほか,ライムギパン,フランスパン,種々の形のロールパンなども用いられる。食パンは焼きたてよりも半日くらいたったものが,切るにもバターなどを塗るにも扱いやすい。そのまま,あるいはトーストにし,ふつうはバターを塗る。中にはさむ具をパンに密着させ,かつ,その水分がパンにしみこむのを防ぐためで,クリーム状に練ると塗りやすい。肉,魚,野菜をはさむ場合は,1/4量の溶きガラシを混ぜたカラシバターを使うことが多い。レモン汁,チーズ,コショウ,ニンニクなどを加えて変化をつけることもある。具をはさみ終えたら,何組か重ねて固く絞ったぬれぶきんで包み,軽い押しをしてしばらく置き,なじんだころを見はからって適宜の大きさに切り分ける。
サンドイッチは,パン2枚に具をはさんだクローズドサンドイッチが基本になる。この方式で,パン3枚で2層の具をはさめばダブルデッカーサンドイッチ,4枚で3層ならばスリーデッカーサンドイッチという。チーズとハムをはさんだクローズドサンドイッチの両面をバターで焼いたものが,フランスのクロックムッシューである。3~4枚のパンをトーストにし,ローストチキン(またはシチメンチョウ),ベーコン,トマト,レタスなどをはさんだ温かいサンドイッチは,クラブサンドイッチと呼ばれている。以上に対して,1枚のパンの上に種々の材料をのせたものをオープンサンドイッチと呼ぶ。デンマークのスミュアブローズsmørrebrød(バターを塗ったパンの意)と呼ばれるオープンサンドイッチは,のせる材料が多彩なことで有名である。
そのほか変わった形のものとしては,薄切りのパンに材料を巻き込んだロールサンドイッチ,黒パンと白パンを市松模様に組み合わせたチェッカーボードサンドイッチ,大型のバゲットや食パンをそのまま使い,上部を薄く切って蓋(ふた)にし,中身をくずさぬようにそっくり取り出してサンドイッチにつくり,外側をケースにしてもとどおりに詰めるローフサンドイッチ,さらにはホットドッグやハンバーガーのようなものもある。
執筆者:辻 静雄
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