トースト(読み)とーすと(英語表記)toast

翻訳|toast

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トースト」の意味・わかりやすい解説

トースト
とーすと
toast

火(輻射(ふくしゃ)熱)にあぶって茶色にすること、またこのようにあぶったパンをいう。トーストして焦げ色のついたパンは見た目に食欲をそそり、風味がよくなるうえに消化もよい。日本のトーストは食パン薄切りをトーストしたものをさし、焦げ色は好みにあわせ、バターを塗りジャムなどをつけて食べる。

 外国での代表的なトーストには次のようなものがある。(1)メルバ・トースト 一度軽く焼いたパンを2枚に切り、もう一度両面が茶色になるまで焼いたもの。ホテル経営で世界的に有名なセザール・リッツ夫人のために料理人エスコフィエがつくったもので、トースト・マリーとするはずだったが、オーストラリアの有名なソプラノ歌手ネリー・メルバ(1861―1931)が演奏旅行でそのホテルに泊まり合わせ、節食中でトーストばかり食べていたため、メルバびいきのエスコフィエはこのトーストにメルバの名前をつけてしまったという。(2)フランスパンのトースト 細長いフランスパンを適当な間隔を置いて深く切り込み、底の皮だけつなげておく。このスライスした各片の片側だけにバターを塗って、中火オーブンで約10分間焼く。(3)バター・カップ 白パンの耳を切り落として薄切りにした表面にバターを塗り、マフィン型に押し込んで、四角な切片四隅が花のように開いた形に仕上げたもの。(4)トースト・ケース 白パンを厚さ約5センチメートルずつにスライスして耳を切り、真四角か長四角体にして上面中央に四角く穴(あな)をくりぬいた箱状にし、表面にバターを塗ってオーブンでトーストしたもの。(5)ラスク 一度焼き上げたパンをスライスしてトーストした製品をいう。古くから栄養食、保存食として用いられたが、現在では病人食、健康食として注目されている。フランスのビスコット、ドイツのツィーバック、オランダのダッチラスクは有名で、それぞれ生地の配合とトーストぐあいに特徴がある。

 祝杯乾杯のことを英語でトーストというが、これは中世紀の習慣に、飲み物にトーストしたパン切れを添えるということがあって生まれた用語といわれている。

[阿久津正蔵]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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