シェルフォード
しぇるふぉーど
Victor Ernest Shelford
(1877―1968)
アメリカの生態学者。ニューヨーク州生まれ。シカゴ大学を卒業、イリノイ大学で教授を務め(1927~1946)、アメリカ生態学会の初代会長ともなった。初期は動物生態学者として昆虫や水生動物の分布や時間変化を研究したが、その方法は、生物の進化や適応の問題よりも、環境条件に対する生理的反応に注目したものであった。のちに植物の遷移説を確立したアメリカのF・E・クレメンツとの共著『生物生態学』Bio-ecology(1939)を刊行し、生態系における動物と植物とを総合する生物群集(バイオーム)の概念を提唱した。生態学を実証的な研究に導いたとされる。
[大林雅之]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
シェルフォード
Victor Ernest Shelford
生没年:1877-1968
アメリカの生態学者。ニューヨーク州生れ。長くイリノイ大学教授を務め,アメリカ生態学会初代会長でもあった。初期には植物の遷移に伴う甲虫や魚の分布の変化を研究し,環境と生物との相互関係を強調し,また恒温恒湿器を用いて昆虫の成長・生存と温湿度との関係をしらべ,これから分布や発生量の変化を予測しようとした。これらの研究をもとに《実験室と野外の生態学Laboratory and Field Ecology》(1929)などを著し,いわゆる個生態学の発展につくしたが,後期には生物群集内の種間相互関係を強調するようになり,植物学者F.E.クレメンツとともにこの立場に立った著書《生物生態学Bio-ecology》(1939)を発表した。
執筆者:伊藤 嘉昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
シェルフォード
Shelford, Victor Ernest
[生]1877.9.22. ニューヨーク,チェマング
[没]1968.12.27.
アメリカ合衆国の動物学者,生態学者。シカゴ大学卒業。1916年,アメリカ生態学会の初代会長。イリノイ大学教授(1927~46)。1933年より,動物群集の個体数変動と環境変化との間の相関について研究。数年から 100年に及ぶ周期をもって個体数が周期的変動を繰り返す実例を数多く報告した。1939年には,植物学者のフレデリック・エドワード・クレメンツと共同で『生物生態学』 Bioecologyを書き,バイオームという概念を提示した。これは生物相を用いて地域を特徴づける際に役立てられ,たとえば,シェルフォードの主著である『北米の生態学』The Ecology of North Americaのなかで,彼は北アメリカを,ツンドラ,針葉樹林帯などいくつかのバイオームに分けている。
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世界大百科事典(旧版)内のシェルフォードの言及
【生態系】より
…こうした考え方は,アメリカのクレメンツF.E.Clementsによりさらに発展させられた。植物生態学者であるクレメンツは,1930年ころから動物生態学者であるシェルフォードV.E.Shelfordとの共同研究で,動植物を分離しない〈生物生態学〉という新しい生態学の分野を開拓した。彼らは生物共同体の地域的な単位をバイオームbiomeと名づけ,それはあたかも生物の個体と同じような高度の有機体と考えた。…
【生物群集】より
…こうした具体的な生物と生物との間の食う食われるの関係を連ねてみると,そこに[食物連鎖]food chainができあがる。 食物連鎖図のかかれた最初は,1913年のV.E.シェルフォードによるアメリカ合衆国イリノイ温帯草原についてのものといわれ,一方,日本での食物連鎖図の最初は,可児藤吉(1908‐44)が1938年にかいた水生昆虫を中心とする渓流生物についてのものだろう。ちなみに芸術作品には,もっと古い時期から食物連鎖をあらわしたものがあって,例えば《ガリバー旅行記》の著者のスウィフトには〈ノミの体にゃ血を吸う小さいノミ,小さいノミにはその血を吸う細っかいノミ,こうして無限に続いてる〉という詩があるし,16世紀フランドルの画家大ブリューゲルの作《大きい魚は小さい魚を食う》は,つとに有名である。…
※「シェルフォード」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」