改訂新版 世界大百科事典 「シバピテクス」の意味・わかりやすい解説
シバピテクス
Sivapithecus
1250万~850万年前に,ヒマラヤ山麓のシワリク丘陵(インド,パキスタン)に棲息した大型の化石類人猿。オランウータンの祖先種と考えられている。属名はヒンドゥー教の破壊神シバに由来する。3種が知られている。1910年にG.ピルグリムによって創設された。その後,アフリカとユーラシアで多くの化石類人猿の属,種が乱立的に記載されたが,65年にE.L.サイモンズとD.ピルビームによって,それらをドリオピテクス属Dryopithecus,ギガントピテクス属Gigantopithecus,ラマピテクス属Ramapithecusに集約する見直しがなされ,前二者は類人猿,犬歯が小さく,歯や顎が華奢なラマピテクスはヒト科で,アウストラロピテクス属につながるとされた。しかし,その後,ラマピテクスはシバピテクスの雌であること,彼らの包括的分類は化石類人猿の多様性を過小評価していたことが判明し,シバピテクス属が復活した。82年にD.ピルビームによって発表されたシバピテクスの顔面頭蓋は,それがオランウータンの祖先であることを決定づけた。現生大型類人猿はいずれも懸垂姿勢に適応した骨格特徴をもつが,シバピテクスが懸垂姿勢を頻繁にとっていた様子はなく,そうした特徴は平行進化したと考えられる。乾燥化により800万年前までに絶滅したが,現生オランウータン系統とギガントピテクスGigantopithecusを生み出した。
執筆者:中務 真人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報