日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドリオピテクス」の意味・わかりやすい解説
ドリオピテクス
どりおぴてくす
Dryopithecus
第三紀中新世後期から鮮新世初期にかけて生存していた大型の化石霊長類。その名は「ナラの木のサル」を意味する。かつて森にすみ、樹上生活を営んでいたとされる。1856年、フランスのラルテにより発見されたが、学問的に研究された最初の化石類人猿である。今日ではヨーロッパ、アフリカ、アジアの各地から数多くの化石が出土しているが、そのほとんどは顎骨(がくこつ)と歯である。これらの標本は多くの学者により分類が試みられ、シバピテクス、プロコンスルと同属とされたこともあった。大臼歯(きゅうし)の咬面(こうめん)にY字状の溝があり、これが現代人の大部分の下顎第一大臼歯にみられるところから、かつては人類の祖先とみなすむきもあった。今日では現生大型類人猿の祖先、あるいはその近縁のものと考えられている。
[香原志勢]