ギガントピテクス(その他表記)Gigantopithecus

改訂新版 世界大百科事典 「ギガントピテクス」の意味・わかりやすい解説

ギガントピテクス
Gigantopithecus

1935年にG.H.R.vonケーニヒスワルトによって記載された,超大型の化石類人猿(ギガント=巨大な)。2種が知られ,ギガントピテクス・ギガンテウスG.giganteusインドパキスタンシワリク丘陵に700万~600万年前,より大型のギガントピテクス・ブラッキG.blackiは南中国とベトナムに190万~40万年前に棲息していた。種小名ブラッキは,北京原人を記載したD.ブラックにちなむ。ギガントピテクス・ギガンテウスは,1915年にドリオピテクス・ギガンテウスとして記載されたが,後にこの属に移された。比較的小さな切歯と犬歯,巨大な臼歯をもち,繊維質の多い植物食に特殊化していた。ギガントピテクス・ギガンテウスの初出年代がシバピテクスSivapithecusの推定絶滅年代に近いことから,後者から派生したとされている。南中国では,パンダと競争した結果,絶滅したという仮説もある。しばしば,ゴリラの倍近くの体重などと言われるが,歯と顎しか見つかっておらず,体の大きさは明らかでない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギガントピテクス」の意味・わかりやすい解説

ギガントピテクス
Gigantopithecus

中国およびインドで発見された中新世から更新世中期に属する巨大な化石霊長類属名。ギガントピテクス・ブラッキ G.blacki という名は,ホンコン広東で発見された大きな 4本の大臼歯と 1本の犬歯に基づいて,1935年につけられた。1956年には中国南部の広西で 3個の下顎骨と多数の歯が発見された。1969年にはインド北部でも下顎骨が発見され,ギガントピテクス・ビラスプレンシス G.bilaspurensis という種名が与えられた。ギガントピテクス属とほかの霊長類との関係ははっきりしていない。ヒト科祖先と考えられたこともあったが,今日では絶滅した巨大な類人猿と考えられている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギガントピテクス」の意味・わかりやすい解説

ギガントピテクス
ぎがんとぴてくす
Gigantopithecus

中国南部で発見された巨大な歯および頭骨をもつ化石霊長類の一種。オランダの古生物学者ケーニヒスワルトは1935年、香港(ホンコン)の薬種(やくしゅ)屋で、竜骨(りゅうこつ)(化石)として売られていたもののなかから、容積にして現代人の10倍にもなる巨大な大臼歯(きゅうし)を発見、購入し、これに対して「巨大なサル」の意のギガントピテクスという属名をつけた。これに人類的な特徴をみいだした人類学の泰斗ワイデンライヒはジャワ島出土のメガントロプスとあわせ考え、人類祖先巨人説を提唱したが、その後、同属のものが、中国南西部およびインドより発見され、大型化石類人猿であることが判明し、この説は否定された。しかし、中期更新世(洪積世)のもので、ホモ・エレクトゥスと同時代であることから注目されている。

[香原志勢]

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百科事典マイペディア 「ギガントピテクス」の意味・わかりやすい解説

ギガントピテクス

化石類人猿の一つ。1935年に古生物学者ケーニヒスワルトが香港の薬店で巨大な右下顎第3臼歯(きゅうし)を発見,ギガントピテクス・ブラッキと命名。人類説と類人猿説とが分かれ,ワイデンライヒがこの化石をもとに人類祖先巨人説を唱えたことは有名。現在ではオランウータンに近い類人猿とされる。
→関連項目竜骨(薬)

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世界大百科事典(旧版)内のギガントピテクスの言及

【霊長類】より

…中新世から鮮新世にかけては高等霊長類の適応放散の時代で,コロンビアの中新世の地層からはホムンクルスHomunculusなど新世界ザルの化石資料が増え,ヨーロッパからアフリカにかけてはドリコピテクスDolichopithecus,メソピテクスMesopithecusなどのオナガザル科の化石が知られている。また,ヨーロッパではテナガザルの祖型と考えられているプリオピテクスPliopithecusが,イタリアからはオレオピテクスOreopithecusの完全な化石が発見されているし,プロコンスルProconsul,ドリオピテクスDryopithecus,ラマピテクスRamapithecus,ギガントピテクスGigantopithecusなどの現生類人猿やヒトに近縁な化石がアフロ・ユーラシア各地で発見されている。そして鮮新世後半のアウストラロピテクスAustralopithecus,さらに洪積世の原人ホモ・エレクトゥスHomo erectusへとつながっていくのである。…

【化石類人猿】より

…ちょうどこの頃,アフリカとユーラシアの両大陸間に陸橋が形成され,その陸橋を通って南ヨーロッパに入り,西へと広がったグループがあり,ドリオピテクス類の名でよばれている。一方,東へ広がったグループに,シバピテクス類やギガントピテクス類がある。 化石類人猿,とくにその初期の漸新世グループについては,他の化石霊長類と明確に区別できるほど形態特徴は分化しておらず,むしろ原始的特徴を保持する傾向がつよいグループと考えた方がよい。…

【霊長類】より

…中新世から鮮新世にかけては高等霊長類の適応放散の時代で,コロンビアの中新世の地層からはホムンクルスHomunculusなど新世界ザルの化石資料が増え,ヨーロッパからアフリカにかけてはドリコピテクスDolichopithecus,メソピテクスMesopithecusなどのオナガザル科の化石が知られている。また,ヨーロッパではテナガザルの祖型と考えられているプリオピテクスPliopithecusが,イタリアからはオレオピテクスOreopithecusの完全な化石が発見されているし,プロコンスルProconsul,ドリオピテクスDryopithecus,ラマピテクスRamapithecus,ギガントピテクスGigantopithecusなどの現生類人猿やヒトに近縁な化石がアフロ・ユーラシア各地で発見されている。そして鮮新世後半のアウストラロピテクスAustralopithecus,さらに洪積世の原人ホモ・エレクトゥスHomo erectusへとつながっていくのである。…

※「ギガントピテクス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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