スピリルム(読み)すぴりるむ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スピリルム」の意味・わかりやすい解説

スピリルム
すぴりるむ
[学] Spirillum

スピリルム科の細菌で、淡水および海水に生息する。グラム陰性で螺旋(らせん)状を呈する。長さ14~60マイクロメートル、幅0.25~1.7マイクロメートル、螺旋波長は5~15マイクロメートル(1マイクロメートルは100万分の1メートル)。菌体の一端または両端に単毛または束毛の鞭毛(べんもう)をもって運動する。スピリルムは好気性または偏性の微好気性であり、化学合成有機酸化生物の一つとされる。糖からは酸を生産しないが、酸化酵素やカタラーゼを生産する。また、スピリルムのうちおおよそ半分の種は、黄緑色で蛍光のある水溶性の色素を生産する。培養にあたっての栄養要求性は単純で、多くの種類はアミノ酸、ビタミン、プリンピリミジンを必要としない。炭素源として種々の有機酸やアルコール類を利用するほか、通常、窒素源としてアンモニアを利用する。スピリルムには腐生性のものと寄生性のものがある。

[曽根田正己]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スピリルム」の意味・わかりやすい解説

スピリルム
Spirillum

真正細菌類シュードモナス目スピリルム科の代表属。ラセンキンともいう。比較的長い螺旋形またはその巻いた一部分のような形をした細菌で,菌体内にボルチン粒 volutin grain (異染小体) が存在する。細胞末端に束になって生じる鞭毛によって泳ぐことができる。有機物が混った淡水または海水中に生活している。約 20種が記録されており,池や沼などの腐敗水,止水から分離されたものも多い。鼠咬症スピリルム S. minusは発熱性の鼠咬症の病原菌として知られ,日本では鼠毒と呼ばれてきた。

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栄養・生化学辞典 「スピリルム」の解説

スピリルム

 ラセン菌の一つ.食中毒の原因となるカンピロバクターはこのスピリルムに属する.

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